不動産コラム

2025-05-26 14:32:06
4,000万円の家を建てるときに必要な頭金は?住宅ローンの考え方も紹介

住宅購入は、人生の中で最も大きな買い物の1つです。家を建てるときに、「年収はどれくらい必要か」「頭金はいくら用意すべきか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

当記事では、4,000万円の住宅を建てる際に必要な年収の目安、頭金や住宅ローンの組み方、さらに返済計画を立てる上で注意したい点などを解説します。これからマイホームの購入を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

1. 4,000万円の家を建てるために必要な年収は?

住宅購入を検討するときは、自分の年齢でどの程度の価格帯の家を建てられるのかを考える必要があります。その際に目安となるのが「年収倍率」です。年収倍率は住宅価格が年収の何倍に相当するかを示すもので、住宅ローンの借入可能額や無理のない返済計画を立てる際の参考となります。

一般的には、年収の5~7倍の価格帯の住宅が無理のない目安とされています。4,000万円の家を購入する場合、単純計算では年収約570万~800万円が必要となる計算です。

実際、住宅金融支援機構が公表している「2023年度フラット35利用者調査」によれば、年収倍率は住宅の種類によって以下のように異なります。

土地付き注文住宅7.6倍
マンション7.2倍
注文住宅7.0倍
建売住宅6.6倍
中古マンション5.6倍
中古戸建5.3倍

出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」

ただし、物件種別によって求められる年収は変わるため、4,000万円の住宅を検討する際は、物件タイプと年収倍率のバランスを意識しながら資金計画を立てることが大切です。

 

1-1. 4,000万円ではどの程度の家が建てられる?

4,000万円の予算があれば、建てられる住宅の選択肢は広がります。ただし、「土地代込み」か「土地代別」かで、実際に建物にかけられる費用は大きく異なります。

土地代を除いた場合、4,000万円すべてを建物費用に充てられるので、自然素材の使用や高性能な設備の導入など、住宅のグレードを高めることも可能です。一方、土地代込みで予算が4,000万円の場合、土地価格によって建物の予算が大きく変動します。

実際の住宅購入における平均融資金額は以下の通りです。

土地付き注文住宅4,171万円
マンション3,889万円
注文住宅3,092万円
建売住宅3,040万円
中古マンション2,393万円
中古戸建2,182万円

出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」

予算を4,000万円に設定している場合は、平均的か平均よりも少しクオリティの高い住宅を建てられるでしょう。

 

2. 4,000万円の住宅ローンの頭金の目安は?

住宅ローンの借入金額は、頭金の額によって大きく変わります。頭金を多く用意すれば借入額が減り、毎月の返済負担や総返済額の軽減につながります。ここでは、4,000万円の住宅購入を前提に、頭金の額による返済額と総返済額の違いを比較します。

なお、ここでは元利均等返済方式、固定金利年1.820%で返済額を計算しています。

出典:フラット35「金利情報」

また、シミュレーションはフラット35の下記データを参照しています。

出典:フラット35「借入希望金額から返済額を計算」

 

2-1. 頭金なしの場合

頭金を一切用意せず、全額を住宅ローンで賄う「フルローン」を選択する場合、借入額は4,000万円となります。返済年数によって、総返済額には大きな差が生じます。

返済年数月々の返済額総返済額
35年12.9万円5,412万円
20年19.9万円4,776万円

35年ローンの場合、月の返済額は約13万円となり20年ローンと比べると軽く感じますが、返済総額は約5,400万円とかなり高額になるため注意が必要です。

 

2-2. 頭金500万円の場合

頭金として500万円を用意できると、住宅ローンの借入額は3,500万円に抑えられます。この場合、月々の返済負担や総返済額が軽減されるため、フルローンに比べて金銭的なメリットがあります。

返済年数月々の返済額総返済額
35年11.3万円4,735万円
20年17.5万円4,179万円

フルローンと比較すると、35年返済では総返済額が約700万円安くなります。借入比率が9割以下となるため、適用金利も低くなるケースがあります。

 

2-3. 頭金1000万円の場合

頭金1,000万円を用意できれば、住宅ローンの借入額は3,000万円まで減少します。この水準まで頭金を入れると、返済額・総返済額ともに一段と下がり、家計への負担は大きく軽減されます。

返済年数月々の返済額総返済額
35年9.7万円4,059万円
20年15万円3,582万円

フルローンと比べて総返済額が1,200万~1,400万円近く安くなり、住宅購入後の生活費や教育費に余裕を持たせることが可能です。金利もさらに優遇される傾向があるため、長期的に見た場合の経済的効果は大きいと言えます。

 

3. 頭金以外に必要な自己資金は?

住宅購入にあたっては、住宅ローンの頭金だけでなく、さまざまな名目で現金支出が発生します。別途自己資金として用意しておく必要があるので、代表的な費用である手付金と諸費用について知っておきましょう。

 

3-1. 手付金

注文住宅を建てる場合、契約時に「手付金」としてハウスメーカーや工務店に一定の現金を支払うのが一般的です。もし契約後に施主側が一方的に契約を解除する場合、手付金は返還されないのが通常です。ハウスメーカーや工務店側が解除する場合には、手付金の2倍を返還します。

金額の目安としては、物件価格の5%~10%程度が相場とされます。4,000万円の住宅であれば、200万円~400万円程度となります。手付金は契約時に現金で支払う必要があり、住宅ローンの融資実行前に必要なお金なので、自己資金としてあらかじめ用意しておきましょう。

なお、金融機関によっては「つなぎ融資」を利用すれば手付金の支払いを一時的にカバーできますが、別途利息や手数料が発生します。自己資金を十分に準備することで、契約時の資金繰りに余裕を持たせられるでしょう。

 

3-2. 諸費用

住宅購入時には、手付金のほかにも多くの諸費用がかかります。これらの費用は住宅ローンでまかなえないケースが多く、自己資金として準備する必要があります。具体的には、下記のような諸費用が必要となるので押さえておきましょう。

  • 仲介手数料
    不動産会社を介して土地や建物を購入する場合は、仲介手数料を支払う必要があります。上限は宅地建物取引業法で定められており、「物件価格×3%+6万円+消費税」が一般的です。新築一戸建てでも、建売や分譲住宅では仲介業者が入ることがあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
  • 登記費用
    土地や建物の所有権を明確にするためには、登記手続きが必要です。登記の際は「登録免許税」と「司法書士報酬」が発生します。登録免許税は不動産の評価額に応じて決まり、所有権移転登記や抵当権設定登記の内容により変動します。また、登記手続きは専門性が高いため、通常は司法書士に依頼することが多く、司法書士報酬としてさらに5万~10万円程度を要します。
  • 税金
    住宅購入時に発生する税金には、不動産取得税・固定資産税・都市計画税などがあります。不動産取得税は、土地や建物の取得に対して一度だけ課税され、評価額の3%が基本税率となっています。ただし、新築住宅には軽減措置が適用されることが多いため、自治体への確認が必要です。固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課税されますが、初年度分が引き渡し時に精算されるケースもあるので、初期費用として見込んでおくと安心です。

    出典:総務省「不動産取得税」

  • 住宅ローン手数料
    住宅ローンを利用するときは、金融機関に対する事務手数料や保証料、印紙税などの各種手数料がかかります。これらの手数料は合算すると意外に大きな負担となるため、契約前に確認しておきましょう。
  • 保険料
    住宅購入時には各種保険への加入も求められます。まず、住宅ローンを利用する場合、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられています。また、火災保険や地震保険への加入も推奨されており、物件の構造や立地、補償内容によって保険料が異なるので確認が必要です。
  • 引っ越し代
    新居に移る際には、引っ越し代も必要になります。引っ越し費用は移動距離や荷物の量、業者の選定、引っ越し時期(繁忙期かどうか)によって異なります。さらに、新居に合わせて家具・家電を買い替える費用や、カーテン・照明・エアコンの設置費用なども含めると、初期費用は予想以上に膨らむことがあります。引っ越し代だけでなく「新生活準備費」として予算を確保しておくと安心です。

 

4. 4,000万円の家を建てるときに頭金を多くするメリットとデメリット

住宅購入に向けて「頭金をしっかり貯めてから購入するか」「早めに購入するか」で悩む人は少なくありません。家は高額な買い物であり、頭金の有無によって資金計画や生活設計が大きく左右されます。

ここでは、頭金を多くすることで得られるメリットと、頭金を増やすことで生じるデメリットについて解説します。

 

4-1. 頭金を増やすメリット

頭金を増やすことで得られるメリットは複数あります。以下に、返済や審査、金利面での効果を詳しく見ていきます。

  • 返済額・借入期間が短くなる
    頭金を多く入れると住宅ローンの借入額が減るため、毎月の返済額が軽くなったり、返済期間が短縮されたりします。借入期間を短く設定できることで、総返済額も抑えられ、老後の資金計画にも余裕を持たせられます。無理のない返済プランを実現する上で、頭金は重要な要素です。
  • ローン審査に通りやすい
    金融機関は、貸付リスクの低い利用者を優遇する傾向があります。頭金が多いということは、資金管理能力や信用力が高いと評価されるので、住宅ローンの審査に通りやすくなります。一方で、特にフルローンを希望する場合、審査は厳格になり、借入希望額に対して年収や勤続年数、他の借入状況などが厳しくチェックされるでしょう。
  • 金利が安くなることがある
    頭金を多く入れると、住宅ローンの金利が優遇されることがあります。多くの金融機関では、借入額が物件価格の90%以下になると、優遇金利が適用されます。金利の差は長期にわたる返済額に大きく影響し、総返済額の差につながります。長い目で見たときに、金利優遇は家計への負担軽減に直結します。

 

4-2. 頭金を増やすデメリット

頭金を増やすと、資金面や生活設計におけるデメリットもあります。以下に代表的なリスクを紹介します。

  • 家の購入に時間がかかる
    頭金を貯めるには時間がかかるため、家の購入時期が遅れてしまうことがあります。その間に不動産価格が上昇したり、希望するエリアの物件が売れてしまったりする可能性もあるので、チャンスを逃すリスクがあることを認識しておく必要があります。
  • 手元に残るお金が減り、いざというときに不安
    頭金に多くの資金を充てると、生活資金や予備資金に余裕がなくなるおそれがあります。急な病気やケガ、収入減といった不測の事態が起きた際に、生活防衛資金が不足していると家計が破綻するリスクもあります。住宅購入にあたっては、頭金だけでなく、生活費3~6か月分の現金を別途確保しておくとよいでしょう。
  • 家の購入まで家賃を支払う必要がある
    頭金を貯めている間は、現在の住居の家賃を支払い続けなければなりません。この金額をローン返済に回していれば、住宅ローンの早期完済や資産形成につながっていた可能性もあるので、長期的な視点で家賃と住宅取得のタイミングを判断する必要があります。
  • 金利上昇や健康上のリスクがある
    将来的に金利が上昇すれば、同じ物件でも借入条件が悪化する可能性があります。また、健康状態が変化すれば、住宅ローンの審査に通らない、あるいは団体信用生命保険に加入できないなどのリスクが発生します。

 

5. 住宅ローンの返済計画を立てるときに考えたいポイント

住宅ローンは長期にわたる大きな負債となるので、借りる段階で無理のない返済計画を立てておくことが重要です。返済に追われて家計を圧迫しないためには、将来の生活や収支も見据えた上で計画的に借入条件を設定する必要があります。

ここでは、無理のない返済計画を立てる際に押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

 

5-1. 余裕のある返済額を設定する

住宅ローンの返済は数十年にわたるため、無理なく支払い続けられる金額を設定することが第一です。

月々の返済額を抑える方法として、返済期間を長く設定するという手段があります。たとえば、20年返済よりも35年返済のほうが、同じ借入額でも月々の返済額は大幅に軽減され、その分、生活費や教育費などの変動にも対応しやすくなります。

ただし、返済期間を延ばすと、その分利息が多くかかるというデメリットもあります。たとえば4,000万円の借入でも、20年返済と35年返済とでは、総返済額に700万円近い差が生じることもあります。将来の出費や総返済額のバランスを考慮に入れながら、生活に余裕を持たせる返済額を設定することが大切です。

 

5-2. 繰り上げ返済を活用する

繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に一定の金額を前倒しで返済し、ローンの元本を減らす仕組みです。元本が減ると将来支払う予定だった利息の一部が不要となり、結果として総返済額を減らせます。

繰り上げ返済を活用するにはまとまった資金が必要ですが、ボーナス時や貯蓄ができたタイミングで計画的に実行することで、家計の負担軽減につながります。ただし、金融機関によっては手数料が発生するケースもあるため、事前に条件を確認しておくことが重要です。

 

5-3. 自分に合った金利タイプを選ぶ

住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて「固定金利」と「変動金利」があります。固定金利は契約時の金利が返済期間中ずっと変わらないため、毎月の返済額が一定で、将来の計画が立てやすいのが特徴です。一方、変動金利は市場金利の変動に応じて定期的に見直されるので、金利が低い場合は返済額を抑えられるというメリットがあります。

ただし、変動金利は将来的な金利上昇によって返済額が増えるリスクがあるので、金利変動への備えが必要です。一方で、固定金利は初期金利がやや高めに設定される傾向があり、金利が低い時代では損に感じることもあります。

どちらの金利タイプが適しているかは、今後の収入やライフプラン、金利の変動リスクへの耐性によって異なります。金融機関のシミュレーションなどを活用し、自分にとって最適な金利タイプを選びましょう。

 

5-4. ライフプランを考えておく

住宅ローンを返済していくためには、家計全体の設計が不可欠です。家族構成や将来のイベント(子どもの進学、車の購入、介護や老後資金など)を見越した収支の見通しを立てましょう。特に子育て世帯や共働き家庭の場合、収入や支出が変動しやすいので、将来を見据えた資金計画が必要です。

ライフプランをもとに、返済期間や繰り上げ返済の時期なども検討すると、長期的に安定した家計運営が可能になります。

 

まとめ

4,000万円の住宅を建てる際は、単に物件価格を見るだけではなく、年収倍率や頭金、さらには諸費用まで含めたトータルの資金計画を行う必要があります。

頭金は、多く用意することで金利や審査面で有利になる一方、手元資金が減ることで生じるリスクにも注意が必要です。住宅ローンを組むときは、自分に合った金利タイプや繰り上げ返済の活用、将来を見据えたライフプランを検討し、安心してマイホームを持つための準備を整えましょう。

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