不動産コラム

2025-12-23
長期優良住宅のメリットとデメリットとは?後悔しないポイントも解説

長期的に安心して暮らせる住まいを目指す家庭が増える中で、「長期優良住宅」という制度への注目が高まっています。

長期優良住宅とは、国が定めた基準を満たし、耐震性・省エネ性・維持管理のしやすさなど複数の観点から、長く良好な状態で住み続けられると認められた住宅のことです。認定を受けることで得られる経済的メリットも幅広く、建築費用がやや高くなる傾向を踏まえても、長期的には暮らしの安心感と費用面の双方でメリットを感じやすい制度です。

当記事では、長期優良住宅の定義や認定基準、取得メリットと注意点、申請の流れなどを分かりやすく整理し、制度を理解した上で納得できる家づくりができるよう解説します。

 

1. 長期優良住宅とは

長期優良住宅とは、国が定めた基準を満たすことで「長く良好な状態で住み継げる」と認定された住宅を指します。住生活の質の向上と環境負荷の低減を目的として、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行され、2009年6月4日から長期優良住宅の認定制度が始まりました。

制度開始以降、長期優良住宅は年々普及が進み、令和5年度末時点で新築・増改築・既存を合計した累計認定戸数は約159万戸に達しています。

直近では、新築一戸建ての着工戸数の約25%が長期優良住宅の認定を受けており、多くの人が「長く安心して住める家」を重視して家づくりを行っている状況です。

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」

 

1-1. 長期優良住宅の認定条件

長期優良住宅として認定されるためには、下記の条件を満たす必要があります。

長期に使用するための構造・設備を備えている住宅の耐久性を高めるため、劣化対策・耐震性・省エネルギー性などが国の技術基準に適合している必要があります。
居住環境への配慮がある周辺環境との調和や景観維持に配慮した計画が求められます。良好な住環境を将来にわたって保つことが認定要件の1つです。
一定以上の住戸面積を確保している長期に快適に暮らすには必要な広さが不可欠です。過度に狭い間取りでは生活の質が低下しやすいため、最低限の面積基準が定められています。
維持保全計画が作成されている建築後の点検時期・方法、修繕計画などを定めた維持保全計画の作成が必須です。長く良好な状態を保つため、計画的なメンテナンスが前提となります。
自然災害への配慮がある地震や台風など、自然災害に強い構造や立地への配慮が求められます。長寿命住宅としての安全性を確保する重要な項目です。

単に高性能な住宅を建てただけでは認定されないため、設計段階から計画的に基準を満たすような家づくりを行いましょう。

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅とは」

 

2. 長期優良住宅の認定を受けるメリット

長期優良住宅として認定を受けると、税金の軽減や住宅ローンの金利優遇、地震保険料の割引、国の補助金など、経済的な支援策を幅広く活用できます。初期の建築費はやや高くなりやすいものの、入居後の税負担やローン返済、保険料、将来の売却時の資産価値まで含めて考えると、長期的な総コストを抑えやすい選択と言えます。

ここでは、長期優良住宅の認定を受けるメリットを詳しく解説します。

 

2-1. 住宅ローン控除の優遇が受けられる

長期優良住宅は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の条件が一般の新築住宅より優遇されています。具体的には、借入限度額が引き上げられ、控除期間も13年と長めに設定されているため、最大控除額が大きくなります。

たとえば、2024年1月1日から2025年12月31日までに入居した認定長期優良住宅では、借入限度額4,500万円、控除率0.7%、控除期間13年で住宅ローン減税が受けられます。所得や床面積、ローン返済期間などの要件を満たす必要がありますが、一般住宅よりも所得税の負担を軽減しやすい制度と言えます。

ただし、制度内容や対象期間は改正で変わる可能性があるため、最新の情報を税務署や国土交通省資料で確認することが大切です。

出典:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」

 

2-2. 投資型減税の対象になる

長期優良住宅は、住宅ローン控除とは別枠の「投資型減税(認定住宅等新築等特別税額控除)」の対象にもなります。これは、住宅の性能向上にかかった標準的な費用の一部を所得税から直接差し引ける仕組みです。

住宅ローン控除との併用はできないため、ローン借入が少ない人や現金比率が高い人、短期で繰上返済をする予定の人などは、どちらを選ぶと有利か事前に試算しておくと安心です。いずれの制度も適用期限や所得要件があるため、税理士や税務署に相談しながら検討することをおすすめします。

出典:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」

 

2-3. 登録免許税・不動産取得税の控除額が増額される

長期優良住宅として認定を受けた新築住宅は、登記時の登録免許税と取得時の不動産取得税についても、一般住宅より有利な軽減措置があります。

登録免許税では、所有権保存登記の税率が本則0.4%から、長期優良住宅は0.1%へ引き下げられます。所有権移転登記でも、戸建ては0.2%、マンションは0.1%と、一般住宅特例より低い税率が適用されます。不動産取得税についても、課税標準から差し引ける控除額が「一般住宅1,200万円」に対し「長期優良住宅1,300万円」となり、税負担を一段と抑えやすい点が特徴です。

新築時の初期費用を抑えたい場合、設計段階から長期優良住宅の認定を見込み、登記や申告のスケジュールを意識しておくことが大切です。

出典:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」

 

2-4. 固定資産税の減額措置期間が延長される

新築住宅は一定期間、固定資産税が2分の1に軽減されますが、長期優良住宅はその減額期間が一般住宅より長く設定されています。

具体的には、戸建ての場合、一般住宅は3年間2分の1の減税になるのに対し、長期優良住宅は5年間に延長されます。マンションなど3階建て以上の中高層耐火住宅では、一般住宅が5年間減額であるのに対し、長期優良住宅は7年間まで軽減が続きます。

新築後数年間の税負担が大きく抑えられるため、住宅ローン返済が厳しくなりがちな初期のキャッシュフローを安定させやすい点が、長期優良住宅の大きなメリットと言えます。

出典:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」

 

2-5. フラット35の金利引き下げ対象になる

長期優良住宅は、省エネ性や耐久性などが高水準であることから、長期固定金利ローン「フラット35」の金利優遇制度【フラット35】Sや維持保全型の対象になりやすい点も魅力です。

【フラット35】Sは、省エネ性・耐震性・バリアフリー性・耐久性等のいずれかが一定基準を満たした住宅について、当初一定期間、通常のフラット35より借入金利を引き下げる制度です。金利優遇には予算枠や受付期間があるため、金融機関や住宅金融支援機構の最新情報を確認しながら検討しましょう。

出典:住宅金融支援機構「【フラット35】S」

 

2-6. 地震保険料が割り引かれる

長期優良住宅は、耐震等級2以上の確保など高い耐震性能が求められるため、地震保険の「耐震等級割引」や「免震建築物割引」の対象となるケースが多くなります。損害保険各社の地震保険では、建物の耐震等級や免震構造に応じて保険料を割り引く制度が用意されており、条件を満たす場合には保険料が最大50%程度軽減される商品もあります。

実際にどの割引が適用されるかは、保険会社ごとの商品内容や契約時の条件によって異なります。新築計画の段階で、設計者から耐震等級や構造の説明を受けるとともに、地震保険を取り扱う代理店や保険会社に長期優良住宅である旨を伝え、割引の可否や割引率を確認しておくと安心です。

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」

 

2-7. 子育てグリーン住宅支援事業の補助要件を満たせる

長期優良住宅は、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした「子育てグリーン住宅支援事業」において、新築住宅向け補助金の対象区分となっています。

床面積50~240m2の長期優良住宅で、所定の省エネ性能や申請要件を満たす場合、1戸あたり80万円の補助が設定されています。さらに、条件を満たす古家の除却を伴う場合には20万円が加算され、合計100万円まで補助を受けられます。

補助対象となるのは、子育て世帯または若者夫婦世帯であり、申請時点の年齢や子どもの有無など細かな定義があります。スケジュールや要件は年度ごとに見直されるため、公式サイトで最新情報を確認しつつ、利用する場合は工務店やハウスメーカーと早めに相談しましょう。

出典:子育てグリーン住宅支援事業「事業概要」

 

3. 長期優良住宅の認定を受けるデメリット

長期優良住宅は税制優遇やローンの金利引き下げなど多くのメリットがありますが、その裏側で「コスト」「手間」「自由度」の面で注意すべき点もあります。ここでは、長期優良住宅について知っておきたい注意点を紹介します。

 

3-1. 建築費用が高くなりやすい

長期優良住宅のデメリットとして、建築費用が高くなりやすい点があります。

長期優良住宅では、断熱性や耐震性など複数の性能項目で一定以上の基準を満たす必要があるため、断熱材やサッシ、構造材などを標準仕様からグレードアップするのが一般的です。その結果、同じ延床面積の一般的な新築住宅と比べて、本体工事費が数十万円~百万円程度上がることもあります。さらに、認定申請にかかる手数料や評価機関への費用、書類作成の事務コストも発生します。

一方で、もともとの標準仕様で長期優良住宅の基準を満たせるハウスメーカー・工務店もあるため、複数社を比較し、追加コストの有無を事前に確認しましょう。

 

3-2. 建築スケジュールが伸びやすい

長期優良住宅は、通常の建築確認とは別に、住宅性能評価機関での確認と所管行政庁での認定審査が必要です。そのため、プラン確定から着工までのプロセスが増え、認定に数週間~1か月程度かかることも珍しくありません。基準を満たすための構造計算や省エネ計算、図面・申請書類の準備にも時間がかかるので、一般的な新築よりも着工時期が後ろ倒しになり、完成・引き渡しのタイミングも遅くなりやすい傾向です。

入居時期が決まっている場合や賃貸退去・子どもの進学などの予定がある場合は、早い段階から建築会社とスケジュールを共有し、認定に必要な期間を見込んで計画を組むことが安心につながります。

 

3-3. デザインや設計に制限が生まれることがある

長期優良住宅では、高い耐震等級や劣化対策、点検性などの基準を満たす必要があるため、デザインや間取りに一定の制約が生じる場合があります。

たとえば、耐震等級2・3を確保するためには耐力壁や柱のバランスよい配置が求められ、大きな吹き抜けや壁の少ない広いワンルーム空間が設計しにくくなることがあります。また、床下や小屋裏の点検を行うための点検口を設置する必要があり、希望していた天井デザインや収納計画とぶつかるケースもあります。

デザイン性を重視したい場合は、長期優良住宅の実績が多い設計者・工務店に相談し、性能と意匠のバランスをどこまで両立できるかを早めに擦り合わせましょう。

 

3-4. 入居した後も保全計画に基づいてメンテナンスする必要がある

長期優良住宅は、建てて終わりではなく、入居後も維持保全計画に沿って点検・メンテナンスを行うことが前提です。10年以内ごとの定期点検や、大きな地震・台風の後の臨時点検、必要に応じた修繕・改良などを実施する必要があります。

点検や修繕を全く行わなかったり、報告内容に問題があると判断されたりした場合には、認定の取り消しや行政からの指導対象となる可能性もあります。また、点検費用や修繕費用は定期的な支出となるため、長期的な修繕計画と積立を意識することが欠かせません。

 

3-5. 増改築やリフォームのたびに許可を求められる

長期優良住宅は、認定時の計画に基づいて性能や維持管理方法が定められているため、一定規模以上の増改築やリフォームを行う際には、所管行政庁への計画変更申請が必要になります。耐震性や省エネ性に影響するような間取り変更や増築工事などを行う場合、工事着手前に新しい計画が長期優良住宅の基準に適合しているか再度チェックを受けなければなりません。

将来リフォームを検討している場合は、どの程度の工事から申請が必要になるかをあらかじめ設計者や自治体に確認し、手続きの負担も含めて長期優良住宅を選ぶかどうかを判断すると安心です。

 

4. 長期優良住宅の認定申請の流れ

長期優良住宅として認定を受けるためには、設計段階の技術審査から行政による認定、そして竣工後の報告と維持管理まで、一連の手続きが必要です。認定取得をスムーズに進めるためにも、認定申請の流れを押さえておきましょう。

 

4-1. 登録住宅性能評価機関に性能確認を依頼する

まず、長期優良住宅の基準を満たしているかを確認するため、登録住宅性能評価機関に性能審査を依頼します。この審査では、劣化対策や耐震性、省エネ性能、維持管理の容易性など、複数の技術基準に沿って設計内容がチェックされます。

審査に通過すると「確認書」や「適合証」が交付され、これによって設計が長期優良住宅の基準に適合していることが証明されます。審査には数週間かかることがあるため、早めの準備がおすすめです。

 

4-2. 所管行政庁に認定申請を行う

性能評価機関から確認書が交付されたら、次は所管行政庁(市区町村や都道府県)に正式な認定申請を行います。提出書類としては、確認書、認定申請書、設計内容説明書、図面一式、構造計算書などが必要です。書類をもとに「認定基準を満たしているか」を審査し、問題がなければ認定通知書が発行されます。

認定通知を受けて初めて着工が可能になるため、建築スケジュールには申請期間を組み込むことが欠かせません。自治体によって審査期間は異なりますが、一般的には数週間~1か月程度かかります。

 

4-3. 工事完了報告をする

住宅の工事が完了したら、所管行政庁に「計画どおりに工事が完了した」旨の報告を提出します。これは、認定申請時の設計内容が実際の建物で適切に反映されているかを確認するための工程です。

工事完了報告は長期優良住宅として正式に認められた建築物であることの証明にもなるため、報告に使う竣工図、施工写真、施工報告書などは大切に保管しておきましょう。

 

4-4. 維持保全計画に沿って点検や修繕を行う

認定を受けた後は、維持保全計画に従い、定期点検や必要な修繕を継続して行います。長期優良住宅では、30年以上の維持保全が求められ、10年以内ごとの定期点検や、地震・台風後の臨時点検が義務付けられています。点検結果に応じて補修・改良を行い、その内容を記録として残します。適切な維持管理を怠ると認定取消の可能性があるため注意しましょう。

多くのハウスメーカーでは点検プログラムを提供しているため、点検費用やサポート内容を事前に確認し、長期的に無理なく管理できる体制を整えることが大切です。

 

5. 長期優良住宅の建築後に後悔しないためのポイント

長期優良住宅で後悔を避けるためには、建築時のコストと入居後の維持管理費、そして税制優遇や補助金といった経済的メリットを総合的に比較する姿勢が欠かせません。

長期優良住宅は高い性能を備える分、断熱材や構造材を強化する費用、申請手数料、定期点検・修繕のコストがかかります。一方で、住宅ローン控除の上限増額、固定資産税の減額期間の延長、地震保険料の割引、フラット35の金利引き下げ、補助金の対象など、金銭的なメリットも大きく、長期的に見るとプラスになるケースも少なくありません。建築前に「追加費用」だけでなく「10~30年で得られる優遇額」を試算し、総額で納得できるかを確認することが大切です。

また、施工業者選びも後悔を防ぐ大きなポイントです。長期優良住宅は高度な技術基準を満たす必要があり、経験や実績が乏しい会社だと設計の自由度が下がったり、申請がスムーズに進まなかったりする可能性があります。過去の認定実績、標準仕様で基準を満たせるか、メンテナンス体制が整っているかなどを事前に確認し、安心して長期的な暮らしを任せられる業者を選びましょう。

 

まとめ

長期優良住宅は、耐震性や省エネ性、維持管理のしやすさなどの基準を満たし、長く良好な状態で住み続けられる住宅として国に認定される仕組みです。普通の住宅よりも建築費用がかかりやすいものの、住宅ローン控除の優遇、固定資産税の減額期間延長、補助金などの充実した支援策を受けられ、長期的な家計負担の軽減につながります。

後悔のない家づくりを実現するためには、建築費用・メリット・将来の維持管理費を総合的に比較し、実績ある施工会社と協議しながら計画を立てることが欠かせません。制度の特徴を理解し、自身のライフプランに合った住まい選びに役立ててください。