不動産コラム

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2024-11-18 19:05:09

マイホームの建築を考える際に、土地選びは最も重要です。理想の土地を見つけるために、エリアや予算を決めた上で、土地に求める条件の優先順位をつけておきましょう。また、周辺環境や土地の形状だけでなく、土地が位置するエリアがどのような地域となっているかも確認する必要があります。

当記事では、土地選びをスムーズに進めるために事前に考えておくべきポイントや土地探しの方法、土地のチェックポイントを詳しく解説します。

 

1. 土地選びの前に考えておくこと

土地選びはマイホームを建てる際に欠かせない工程であり、スムーズに進めるためにはいくつかの準備が必要となります。土地を選ぶときは、事前準備として下記の内容を決めておくとよいでしょう。

 

1-1. 土地の優先順位を決める

土地選びで考えるべき項目には「立地のよさ」「土地の広さ・形」「価格」などがあり、いずれの項目を重視するかは人によって違いがあります。自分がどのような土地を理想としているかを明確にするために、土地の優先順位を決めましょう。

優先順位を付けるときは、各項目を5段階で評価することがおすすめです。

例として立地のよさが5、土地の広さ・形が4、価格が2のように評価すると、「自分の生活条件に合致する立地で、広さ・形が十分な土地」を求めていることが分かります。

優先順位を決めると、候補となる土地の評価や比較も簡単にできて、理想の土地を探しやすくなるでしょう。

 

1-2. エリアを決める

土地の候補が多くなりすぎると土地探しに時間と労力がかかるため、事前にエリアを決めることが大切です。

エリアを決めるときは、生活や通勤に便利なエリアであることを重視するのがおすすめです。「スーパー・コンビニなどの商業施設が近くにあるか」「職場に近い、もしくは駅が近いか」など、自分にとっての利便性を考えてエリアを決めましょう。

また、建てたマイホームには自分や子どもの世代が長く住み続ける可能性もあります。現在だけでなく将来的な視点も持つと、エリアを決めるときに後悔しない選択ができます。

 

1-3. 予算を決める

土地の購入にはまとまった金額がかかるため、予算を決める必要があります。土地の購入後に家を建てることも踏まえて、土地の購入にかける予算を決めましょう。

参考として土地代込みで注文住宅を建てる場合にかかる費用の内訳は、家の建築工事にかかる費用が全体の6~7割、土地の購入費用が3~4割と言われています。家・土地の費用総額を3,000万円で抑えたい場合、土地の予算は900万~1,200万円程度になる計算です。

土地の購入にかけられる予算が決まると、不動産会社やハウスメーカーに相談するときに大体の費用感を伝えられるので、予算に合う提案をしてもらえるでしょう。

 

2. 土地探しの方法

土地選びの事前準備ができた後は、いよいよ土地探しを行います。土地を探す方法にはいくつかの選択肢があるので、自分に合う方法を選ぶことが大切です。

以下では土地探しの主な方法を3つ挙げて、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。

 

2-1. 不動産会社に相談する

土地は、不動産会社に相談して紹介してもらうことが可能です。

不動産会社は不動産売買の専門家であり、地域に根差した会社であれば希望条件に合致する土地を紹介してもらえるかもしれません。インターネット上で掲載されていない非公開の土地を紹介してもらえる可能性もあるので、土地選びの選択肢を広げられるでしょう。

一方で、実際に不動産会社の店舗に赴いて相談しなければならない点がデメリットです。不動産会社によっては、家づくり用の土地に詳しくないケースもあるため注意してください。

 

2-2. ハウスメーカーに相談する

ハウスメーカーは家の建築・販売を主要事業としている建築会社のことで、中には土地探しのサポートをしてくれる会社もあります。

ハウスメーカーに相談すると、家づくりを前提とした土地を提案してもらえる点がメリットです。相談先のハウスメーカーに住宅建築を依頼する場合は、土地探しと家づくりの計画を並行して進められる利点もあります。

デメリットは、すべてのハウスメーカーが土地探しをサポートしてくれるとは限らない点です。また、理想の土地が見つかった場合には相談先のハウスメーカーに住宅建築を依頼するという条件が生じて、施工会社選びを自由にできないデメリットもあります。

 

2-3. インターネットで探す

インターネット上の不動産情報サイトなどを利用して、自分で土地を探す方法です。インターネットで探す方法は時間や場所の制約がなく、好きなタイミングで土地探しを行えます。

しかし、インターネット上の情報は最新のものであるとは限りません。中には情報の更新が滞っていて、売約済みの土地情報を掲載しているケースもあることが注意点です。

また、インターネット上の情報だけでは、土地の詳細や周辺情報が確認できないことがあります。失敗しない土地選びをするには実際に土地を訪れる必要があり、インターネット上の情報だけで土地探しを完結させることはできません。

 

3. 土地を選ぶときのチェックポイント

土地にはそれぞれ異なる特徴があります。一見すると希望条件を満たせる土地であっても、細かいポイントに目を向けると条件が悪いこともあるため、特徴を細分化してチェックしましょう。

以下のポイントに着目しながら探すことで、理想の土地を選べます。

 

3-1. 周辺環境

土地の周辺環境は、土地に家を建てて生活するときの暮らしやすさや安心感にかかわるポイントです。具体的には下記のポイントに着目しましょう。

  • 生活利便施設があるか
    生活利便施設とは、日常生活に欠かせない各種施設のことです。買い物ができるスーパー・コンビニや、病院・銀行・郵便局などの公共施設が該当します。
  • 交通に不便はないか
    交通機関が近くにあると通勤や通学がしやすくなります。駅・バス停までの距離や、車を運転する方は主要道路が利用しやすいかを確認しましょう。
  • 子育てしやすいか
    子育てをする家庭では、子育てしやすい環境であることが重要です。幼稚園・小学校・中学校といった教育施設が近場にあるかを確認します。
  • 地域に問題がないか
    土地周辺の治安がよく、騒音問題などのトラブルもないかを確認すると暮らしやすい土地を選べます。

 

3-2. 面積や形状

土地の面積や形状は、土地に建てる家の広さや間取りにかかわるポイントです。土地が狭いと建てられる家も狭くなるため、理想とする家の広さに見合う面積の土地を選びましょう。

また、土地の形状は大きく分けて、「整形地」と「不整形地」に分けられます。

整形地は土地の形状が整っていて、家を建てる際に間取りの自由度が高い土地です。

一方で不整形地は土地の形状がいびつで、土地の形状に合わせて家の間取りを決める必要があります。間取りの自由度が低くなるため注意な土地です。

 

3-3. 用途地域

住宅用の土地を購入する際は、用途地域のチェックが必要です。

用途地域とは、エリア内にある土地に建てられる建物について、建物の種類や規模・用途などを定める枠組みのことです。用途地域には以下の13種類があります。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 田園住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

出典:国土交通省「用途地域」

用途地域の中でも、工業専用地域は工場用の地域であるため、家は建てられません。

また、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域は住宅地用の用途地域であるものの、建物の高さが制限されます。3階建てのように高さがある住宅は建てられない点に注意してください。

 

3-4. 防火地域

土地が属しているエリアが、防火地域に指定されているかどうかも確認しましょう。

防火地域とは、市街地において火災の危険性を防ぐために、建物にさまざまな制限が課されている地域のことです。駅前や商業地域のように、建物が密集しやすく火災の危険性が高い地域は防火地域に指定されているケースがあります。

また、防火地域よりも規制が緩やかな「準防火地域」という指定もあります。

防火地域に家を建てる場合は、建物を耐火建築物や準耐火建築物で建てなければなりません。耐火建築物や準耐火建築物の設計・建築には専門知識が必要であり、建築費用や工期の増加につながる可能性があります。

土地が防火地域であるかどうかは、地域を管轄する役所で尋ねたり、不動産会社やハウスメーカーに相談したりすることで調べられます。

 

3-5. 建蔽率・容積率

土地に建てられる家の広さにかかわるポイントには、建蔽率・容積率もあります。

建蔽率とは、土地の面積に対して、建物の建築面積が占める割合のことです。例として建蔽率が50%の場合、100平方メートルの土地で建てられる家の面積は50平方メートルとなります。

もう1つの容積率は、土地の面積に対して、建物各階の床面積を合計した「延床面積」が占める割合のことです。容積率が80%の場合、100平方メートルの土地であれば延床面積は80平方メートルまでとなります。

出典:大阪市「建物の建ぺい率や容積率の制限について」

建蔽率・容積率は用途地域ごとに上限が定められています。土地を選ぶ際は建蔽率・容積率を調べて、建てたい家の広さに見合うかどうかを確認しましょう。

 

3-6. 地盤

土地の地盤とは、建物の重さが伝わる地中部分のことです。地盤は一般的に「硬い地盤」と「軟らかい地盤」があります。

硬い地盤は安定していて、地震が起きても崩れにくく、地盤沈下もしにくい土地です。反対に軟らかい地盤は、地震によって地盤が崩れやすく、地盤沈下も発生しやすい傾向があります。

家を建てる土地として適しているのは硬い地盤です。軟らかい地盤に家を建てる場合は、地盤沈下などが発生しないように地盤調査や地盤改良工事を行わなければなりません。

土地に家を建てる安全性や、地盤改良にかかる工事費用を正確に把握するために、土地選びの段階で地盤を調べる必要があります。

 

3-7. 境界線

土地の境界線は、土地所有者が所有する範囲を示しています。境界線が明確になっていないと隣地の所有者とトラブルが発生する可能性があるため、購入前に土地の境界をはっきりさせることが重要です。

土地の境界線は、下記の方法で調べられます。

  • 法務局で調べる
    法務局で土地の登記情報や地図、地積測量図を調べる方法です。自分で調べられるものの、土地の情報を取得するには手数料がかかります。
  • 測量士に依頼する
    土地測量の専門家である測量士に依頼して、土地の境界線を明確にしてもらう方法です。境界線が不明瞭な土地についても、はっきりと境界線を定められる利点があります。
  • 土地家屋調査士に依頼する
    土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記や土地・家屋の調査を行う専門家です。土地家屋調査士に依頼することでも、土地の境界を確定できます。

 

3-8. 土地の過去

土地によっては「過去に浸水したことがある」「昔は化学工場が建っていた」など、家を建てるにあたって不安材料となる過去が存在する可能性があります。安心して暮らせるマイホームにするためには、土地の過去を調べたほうがよいでしょう。

土地の過去を調べるには、国土地理院が提供する「地理院地図」の利用がおすすめです。地理院地図にはさまざまな地図があり、土地の災害リスクや過去に発生した災害の航空写真を確認することができます。

また、過去に土地の上に建っていた建物の情報を調べるには、法務局で「閉鎖登記簿」を取得する方法があります。閉鎖登記簿は、建物の登記記録が閉鎖されたときに作成される帳簿であり、取得することで閉鎖された建物の情報を確認できます。

 

4. 理想の土地を見つけるには?

土地探しを行うと、購入候補となる土地がいくつも見つかります。候補の中から理想の土地を選ぶには、ポイントを押さえて土地の比較や判断をすることが重要です。

最後に、土地探しを行うときのポイントを4つ解説します。

 

4-1. 実際に現地に足を運ぶ

土地の詳しい情報は、物件情報や写真だけでは分かりません。購入後に生活する環境を知るためにも、実際に現地に足を運んで土地の見学をしましょう。

土地の見学時には、下記のポイントを確認することがおすすめです。

  • 土地の広さや、周辺の建物との距離はどの程度か
  • 土地に接続する道路は十分な幅があるか
  • 採光性や通気性に問題がないか
  • 生活利便施設が周辺にあるか
  • 最寄り駅から土地までの距離と、徒歩での移動時間はどの程度か
  • 子育てをする場合は教育施設が近くにあるか
  • など

また、気になる土地には数回に分けて見学することがおすすめです。平日の朝方に訪問した後に土日や夕方にも訪問すると、周辺環境をより詳しく確認できます。

 

4-2. 建物のプランを考えておく

土地選びを始めてから実際に購入するまでには、数か月~1年程度の期間がかかる場合もあります。土地を購入した後にすぐ家づくりへと進められるように、土地選びと並行して建物のプランを考えておきましょう。

建物のプランを考えておくと建てたい家がイメージできて、土地に求める条件がよりはっきりと認識できます。

また、土地購入と住宅建築のために住宅ローンを利用するには、家づくりにかかる予算を明確化しなければなりません。

土地選びの段階から建物のプランを考えておくと、家づくりの規模から予算を明確化できるため、すぐにローン申請を行うことが可能です。結果としてローン審査の通過から建築開始までがスムーズに進み、家づくりにかかる期間を短縮できます。

 

4-3. 値段の安さだけで土地を選ばない

土地を安く購入できると、家づくりにかかる費用総額を抑えられます。

しかし、値段の安さだけで土地を選ばないようにしましょう。周辺の土地相場よりも安い土地には何らかの理由があり、購入後の後悔につながる可能性があるためです。

土地費用が安い代表的な理由としては、「土地の形状が悪い」ことが挙げられます。形状が悪い土地は敷地面積が広くても有効活用できる部分が少なく、実際には割高というケースが少なくありません。

また、「私道負担がある土地」「古家付き土地」も土地の値段が安くなります。

私道負担とは、土地の一部に私道が含まれている状態のことです。私道部分の上には建物を建てられず、私道部分の土地面積は建蔽率・容積率の計算に使用できないなど、家づくりにおいて不利な土地条件となっています。

古家付き土地は、古い家屋が建っている土地のことです。新しい家を建てるためには古い家屋を撤去する必要があり、更地を購入する場合よりも費用がかさむケースがあります。

 

4-4. 希望の範囲を広げる

さまざまな希望条件を設定して土地を探していると、条件を満たす土地がなかなか見つからないことがあります。

もし理想の土地が見つからない場合は、土地の優先順位や希望条件を広げるとよいでしょう。「立地がよく、広さも十分にある土地」を求めていた場合は、「とりあえず立地が最優先で、広さは最低限あればよい」と変えると、候補の土地を見つけやすくなります。

希望の範囲を広げる場合は、相談先の不動産会社やハウスメーカーにも変更点をしっかりと伝えることが大切です。不動産会社やハウスメーカーは変化した優先順位や希望条件に合わせて、適した土地を提案してくれます。

 

まとめ

土地選びは優先順位を明確にしながら、予算や立地、土地の形状、周辺環境なども考慮して選びましょう。現地に実際に足を運び、暮らしたときの様子をイメージすることが大切です。

土地探しは、不動産会社やハウスメーカーに相談して進めることも可能です。時間と労力や労力はかかりますが、長い目で見て後悔のない選択をするための投資と考え、焦らずに取り組みましょう。


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