不動産コラム

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2024-12-17 10:20:33

「狭小住宅」は、一般的に20坪以下の小さな土地に建てられる住宅を指し、さまざまな工夫を行うことで住みやすい空間を作り出せます。縦方向に空間を活用したり、空間の区切りを減らしたりするなどの工夫で、住み心地を損なわずに収納スペースを確保し、開放感のある空間を作り出せます。

当記事では、狭小住宅のメリットや間取り設計のポイントを中心に、狭小住宅を選ぶ際の参考となる具体的なアイデアを紹介します。戸建て住宅を建てようと検討している方は、ぜひご覧ください。

 

1. 狭小住宅とは?

狭小住宅とは、狭い土地に建てられる家のことを指します。土地面積についての法的な定義は設けられていませんが、20坪以下の住宅を「狭小住宅」と呼ぶのが一般的です。

狭い土地に対して、「住みにくさ」をはじめとする、ネガティブなイメージを持たれるケースも少なくありません。しかし狭小住宅では、狭小地を有効活用して「住みやすい居住スペース」を確保する工夫を施すことが可能です。特に3階建て・4階建てなど、縦方向に面積・空間を確保する建築事例が多く見られます。

 

1-1. 狭小住宅のメリット

狭小住宅ならではの具体的なメリットは、以下の4つです。

  • 都市部でも住宅を持ちやすい
    都市部は土地が限られており、地価が高い傾向が見られます。狭小住宅は、狭い土地を有効活用して住宅を建設するため、都市部でもマイホームを持ちやすいのがメリットです。
  • コストを抑えられる
    狭小住宅は、面積が狭い分、比較的安い価格で土地を取得できます。また、狭小住宅は土地と建物の面積が小さいため、固定資産税や都市計画税の支払いも安く済みます。さらに、面積が小さい住宅は大きい住宅と比べて修繕部分が広範囲に及ばないため、修繕費も安く済むケースがほとんどです。マイホーム購入時のコストに加えて、住宅購入後の維持費が抑えられる点も魅力です。
  • 利便性の高い土地に住める
    駅周辺の土地や近隣に商業施設・公共施設が揃う土地など、利便性が高いエリアの土地は人気が高く、地価も高い傾向が見られます。狭小住宅を選ぶと、不動産取得費用が抑えられるため、通勤・通学や買い物に便利な土地に手が届きやすいのもメリットです。
  • 掃除がしやすい
    狭小住宅は、掃除や片付けがしやすい点も嬉しいポイントです。住宅面積が大きいほど、掃除が必要なスペースも増えます。忙しい中で、片付け・掃除といった日頃のメンテナンスが負担になってしまうケースも少なくありません。しかし、必要最低限の床面積で住みやすい空間になるように設計された狭小住宅は、日頃のお手入れが行き届きやすいのが利点です。また、狭小住宅は土地が狭い分、庭や外構のメンテナンスにかかる手間も省けます。

 

2. 狭小住宅の間取りで考えたいポイント

狭小住宅で間取りを考えるときには、いくつか注意したい部分があります。狭小住宅の間取りで気をつけたいポイントとして、以下の4つを紹介するため、理想の家づくりに役立ててください。

 

2-1. 収納スペースの量

快適な住空間を実現するには、収納スペースの量を十分に確保するのが大切です。生活スペースが物で溢れると、どうしても過ごしにくさを感じてしまいます。収納したい物の容量を踏まえた上で、マイホームでの収納計画を立てましょう。

狭い土地に建てられる狭小住宅でも、工夫次第で十分な収納空間を確保できます。例えば、ロフトや屋根裏収納、地下収納などを取り入れて、収納力を向上させるのも1つの方法です。空間を縦方向に有効活用することで、居住スペースを減らさずに収納スペースを確保できます。

さらに、デッドスペースを使った収納・見せる収納といった収納術を活用するのもおすすめです。見せる収納に挑戦する場合は、アイテムの統一感を意識しながら、オープンシェルフなどに並べて収納します。圧迫感が出ないように、適度に余白を残して収納しましょう。

 

2-2. 隣の住宅との近さ

建物の外壁から敷地境界線までの距離は、建築基準法上で規制されています。住宅密集地で狭小住宅を建てる場合は、あらかじめ、住宅を建築する自治体の都市計画情報を確認しておきましょう。間取りを考える際には、隣の住宅との近さを考慮した工夫も重要です。隣の住宅との距離が近いと、音・視線・採光・風通しなどの面で、問題が発生する可能性があります。

例えば、防音性が高い作りの家を選ぶことで、音の問題を気にせずに快適に過ごせます。また、窓を設ける位置にも注意が必要です。隣家の窓・換気扇などと被る位置に窓を設置すると、視線や景色が気になって快適さが損なわれる恐れがあります。

狭小住宅では、高い位置に窓を設けて、プライバシーを守りながら光・風を取り入れるのがおすすめです。住宅内に吹き抜けを作ると、より開放的で明るい空間が作れるでしょう。隣家や家の前の人通りが気になる場合は、家族で寛ぐリビングを2階に設け、プライバシーを確保するのも1つの方法です。

 

2-3. 駐車スペース

狭小住宅で駐車スペースを設ける工夫として、ビルトインガレージを検討するのもおすすめです。ビルトインガレージとは、建物の1階部分に駐車スペースを組み込んで、シャッターやドアを設置したものです。土地を有効活用することで、敷地面積や前面道路が狭い住宅でも駐車場を確保できます。

ビルトインガレージは、半屋外スペースとして、多様な使い方ができる点も魅力です。水栓・屋外コンセントを設置しておくと、子どもの水遊び・洗車・DIYなど、あらゆる用途で活用できます。

 

2-4. 家事動線

家事動線とは、料理・洗濯・掃除といった家事をする際の移動経路のことです。階段の上り下りの量が多かったり、収納の配置が悪かったりすると、家事がスムーズに進まない可能性があります。

日々の家事負担を軽減するために、家族のライフスタイルも考慮しながら、最短距離でスムーズに作業できる動線と間取りを検討するのが大切です。例えば、水回りを同じフロアに集めてファミリークローゼットを併設させると、料理と同時に洗濯物の片付けやお風呂掃除も進められます。

また、キッチンとパントリーを併設させるのもおすすめです。料理がしやすいだけではなく、キッチン・食卓周りのアイテムをさっと収納できるため、片付けの負担も軽減できます。

 

3. 狭小住宅に取り入れたい間取りのアイデア

狭小住宅をより快適な住まいにするためのアイデアは数多く存在します。狭小住宅に取り入れたい間取りアイデアを10個紹介するので、自分や家族に合った戸建て住宅を建てる際の参考にしてください。

 

3-1. 空間を区切らない

リビングなどは、できるだけ壁で区切らないように工夫することで、開放感ある空間に演出できます。ワンフロアの面積が小さい狭小住宅は、必要以上に壁や仕切りを設置すると、圧迫感のある空間になってしまうため注意が必要です。プライバシーの確保が求められる場所以外は、空間をなるべく区切らないようにしましょう。

例えば、壁を減らした上で吹き抜けを取り入れると、横方向にも縦方向にも空間の広がりを感じられます。視線を遮らない、ゆったりとした生活空間を作れる点がメリットです。どうしても仕切りを設置する場合は、ガラス素材や可動式の仕切りなどを活用するのもおすすめです。

 

3-2. 高窓や地窓を取り入れる

隣家との距離が近く、窓の設置場所に悩む場合は、高窓や地窓の採用も検討してみましょう。

高窓は、壁の高い位置に設置する窓のことを指します。高窓から差し込む光は室内の奥まで届きやすいため、明るくて広い空間を演出できるのがメリットです。また、天窓を設けて吹き抜け構造を採用すると、住宅側面からの採光が難しい場合でも家全体を明るくできます。

地窓とは、床面に近い位置に設置される窓のことを言います。窓が足元にあることで、視線を気にせずに自然光や空気の通り道を確保できるのがメリットです。最近ではスタイリッシュなデザインの地窓も販売されており、おしゃれな空間に仕上げたい場合にも採用されています。

 

3-3. リビングを家の中心にする

リビングは、家族がコミュニケーションを取る場所です。それぞれが集まりやすい家の中心に、リビング・ダイニングを配置するのもおすすめです。最近では、採光や換気の効率などを総合的に考えて、2階にLDKを設置する住宅も多く見られます。

3階建て住宅の場合は、2階にリビングを設置すると、上下階からアクセスしやすい点がメリットです。リビングに続く場所に、壁が高いプライベートバルコニーを設置すれば、プライバシーを守りながら自然光も確保できます。

 

3-4. 造作収納を取り入れる

造作収納とは、空間や収納する物に合わせてプランニングされた、造り付けの収納家具のことです。家族のライフスタイルと用途目的に合わせて、無駄のない設計・施工が行われるため、狭小住宅で空間を有効活用したい場合にも適しています。

部屋のトーンに合わせた配色・デザインを選ぶことで、空間に統一感が出せる点も魅力です。壁にしっかり固定された備え付けの造作収納は、耐震性にも優れているため、家具転倒によるケガのリスクも軽減できます。また、床置き家具のように掃除の度に移動させる必要がなく、家事負担を軽減できるのも嬉しいポイントです。

 

3-5. 天井を高くする

天井を高くすると、縦方向に視野が広がるため、開放感が出ます。建築面積が狭くても住空間を広く演出できる、おすすめの方法です。天井が高いと窓の位置も高くでき、採光・換気の効率アップにつながる点も魅力です。

また、高い天井や吹き抜けを採用すると、インテリアアイテムを選択する際の幅が広がります。例えば、吊り下げ型のシャンデリアやペンダントライトなどは、どうしても圧迫感が出やすいアイテムですが、天井に高さがあると空間にゆとりが生まれるため、自然に設置できます。高さのある観葉植物などを置いても、窮屈な印象になりにくく、インテリアの自由度がアップします。

 

3-6. 中庭を作る

コンパクトな住まいで、より快適な間取りを実現するために、中庭を設けるのも1つの方法です。都市部に狭小住宅を建てる場合は、光や風の通り道を確保する際に苦労するケースも少なくありません。外からの視線を遮る形で中庭を作ると、大きな窓を設置できるため、明るい光や心地よい風を取り入れやすいのがメリットです。

また、外部の視線が届かない建物の内側に中庭を設計することで、家族が寛げるプライベート空間を創出できます。バーベキューを楽しんだり、ペットと遊んだり、家族のライフスタイルに合わせた楽しみ方ができる点も魅力です。植栽エリアを設けると、自然や季節の移ろいも身近に感じられるでしょう。

 

3-7. 水回りを1か所にまとめる

3階建て以上の物件が多く見られる狭小住宅では、フロアを跨ぐ上下の移動が多くなりがちです。生活動線が複雑にならないように、キッチン・バスルーム・トイレ・洗面所などの水回りは、できるだけ1か所にまとめて配置しましょう。自分たちのライフスタイルを踏まえた上で、設置する階数も慎重に検討するのが大切です。

水回りの間取りや設備を1か所に集約させることで、料理・洗濯などの家事がスムーズに行える点もメリットです。さらに、水回りが1か所にまとまっていると、水道管の配管コストを削減できる場合もあります。

 

3-8. デッドスペースを活用する

空間に生まれるデッドスペースをフル活用することで、居住スペースを圧迫せずに、収納場所を確保できます。例えば、階段下の空間や洗濯機周りは、代表的なデッドスペースです。

階段下の空間は、パントリー・多機能クローゼットといった収納スペースに活用できます。洗濯機の上部や側面のデッドスペースは、タオルや衣類、洗剤グッズの収納場所としておすすめです。他にも、以下のような場所がデッドスペースとして挙げられます。

  • トイレの上部
  • ベッドやソファの下
  • 家具と壁の隙間
  • 壁面など

トイレの上部やベッド下のように、縦方向に有効活用できるスペースがないかを検討しましょう。壁面フックなどを活用すれば、吊るタイプの収納も確保できます。

 

3-9. スキップフロアを作る

スキップフロアは、床面の一部に段差をつけて、1つの階層に複数の高さのフロアを設ける間取りのことです。スキップフロアには、階段の踊り場を活用したタイプや、床から少し高い位置に作られる「小上がりスペース」など、複数の種類があります。

スキップフロアを取り入れると、空間を立体的に活用できる点がメリットです。例えば、床の高さを半階ずつずらす形で多層構造のスキップフロアを設計することで、床面積が広く使えます。

また、スキップフロアは高低差を活用して空間を区切ります。上下の階層とは段差やスケルトン階段などで緩やかにつながるため、壁や仕切りを使って空間を小分けにするよりも住空間にゆとりが生まれやすく、採光・換気が行いやすい点も魅力です。

 

3-10. ロフトを作る

日本では、ロフトと言うと、居室の一部を上下に二分割した際の上の層を指すのが一般的です。ロフトを取り入れる際には天井を高く設計した上で、同一階に高さが異なる居住スペースを追加し、ハシゴなどで行き来できるようにします。

ロフトは、機能性や安全性に配慮して設計することで、寝室・収納・子どもの遊び場といったさまざまな用途に活用できます。趣味のスペースや書斎として使われるケースも少なくありません。スペースを賢く追加できるロフトは、狭小住宅の空間活用術として有効な手段です。

 

4. 狭小住宅の間取りで後悔しないためには?

狭小住宅の間取り作りで後悔しないように、あらかじめ気をつけておきたいポイントがあります。狭小敷地で注文住宅プランを考える場合に、後悔しないための対策として、特に重要な2点を解説します。

 

4-1. 将来の家族構成を考える

一生暮らすマイホームを購入する際には、あらかじめ将来の家族構成を考えておきましょう。家族が増えると、それぞれの衣類や持ち物が増え、部屋数・収納スペースが必要になる場合があるためです。

家族が増える可能性がある場合は、一部をフリースペースにして、家族構成の変化に合わせて融通が効くような間取りプランを考えておくと安心です。自由にできるスペースがあれば、いざという時にも柔軟に対応できます。

また、マイホームで過ごす長い年月の中で、家族のライフスタイルは変化します。子どもがいる家庭では、成長とともに、家族の生活にもさまざまな変化が見られます。家族とどのように関わり、どのような家庭にしたいのかを踏まえて、長期的な視点で子ども部屋やリビングなどの在り方を考えるのが大切です。

家族が増えた際の利便性を考慮して、トイレを2つ設置する、洗面所と脱衣室を分けるなどの対策を取り入れておくのもおすすめです。

 

4-2. 自由な間取りが可能なハウスメーカーに依頼する

狭小住宅を作る際には、限られた空間を有効活用して「暮らしやすさ」を創出するノウハウが求められます。狭小住宅の間取りで後悔しないように、設計の自由度が高く、希望の間取りに対応可能なハウスメーカーを選ぶのが重要です。

経験・ノウハウが豊富か、施工事例が多く間取りの提案力があるかといった点に注意しながら、自分に合ったハウスメーカーを見極めましょう。住宅展示場・モデルハウスで間取りの実例を見学したり、営業担当者から話を聞いたりして、複数社を比較検討するのがおすすめです。

また、縦方向に空間を有効活用する狭小住宅は建物自体が細長いため、風や地震などの災害への対策も欠かせません。3階建て・4階建ての住宅でも、十分な耐震性と強度を実現できる施工会社かどうか、あらかじめチェックしておきましょう。

 

まとめ

狭小住宅は、都市部でも手頃な価格で住宅を持てる利点がある一方で、狭い土地を有効活用する工夫が求められます。住みやすさや収納力を確保するためには、収納や家事動線、プライバシーといった多くの要素を考慮した間取り設計が重要です。

また、家族の将来のライフスタイルの変化に合わせて柔軟に対応できるよう、フリースペースや多機能な収納を取り入れるといった工夫も有効です。家族にとっての理想の住まいを形にするために、狭小住宅の特性を最大限に生かした間取りプランを実現しましょう。


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