不動産コラム

2024-08-02 17:04:00
3000万のマンションの固定資産税はいくら?お得な納税方法は?

マンションなどの不動産を購入すると発生する税金が「固定資産税」です。固定資産税は家屋や土地の価格に左右されるため、3,000万円のマンションを買ったらいくらになるのか気になる方は多いでしょう。

当記事では、3,000万円の新築マンション・中古マンションを購入した場合の固定資産税の計算方法や金額例、固定資産税の支払い負担を軽減する方法を説明します。3,000万円のマンション購入を考えている方は、固定資産税について理解を深めておきましょう。

 

1.固定資産税とは?

固定資産税とは、固定資産を所有している場合にかかる税金です。固定資産は大きく分けて土地・家屋・償却資産の3種類があり、下記のような固定資産を所有していると固定資産税の納税義務が発生します。

土地 住宅地・田んぼ・畑・山林・池沼・牧場・原野など
家屋 住宅・事務所・店舗・工場など
償却資産 法人が所有する構築物・飛行機・船・車両・備品など

出典:総務省「固定資産税」

固定資産税は使い道が定められていない税であり、徴収した市町村によって使い道が異なります。道路・学校といった公共施設の整備や、福祉サービスの拡充などが一般的な使い道です。

 

1-1.いつ誰がどこに支払う?

固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で課税対象の固定資産を保有している個人または法人です。固定資産税は市町村などの地方自治体によって課税される地方税であり、固定資産が所在している市町村に対して納税します。ただし、東京都23区内における固定資産税については、東京都に対する都税として納税します。

固定資産税の納税通知書が届く時期は4月~5月頃です。納税方法は、全額を一度に支払う「全額一括納付」と、支払いを4回に分ける「分割納付」の2通りを選ぶことができます。

また、固定資産税の納付方法は下記のような種類があります。

  • 市町村や銀行の窓口
  • 口座振替
  • コンビニ納付
  • クレジットカード
  • アプリ決済
  • Pay-easy
  • eLTAX

納税期日は納付先の自治体によって異なり、分割納付の場合は一般的に4月・7月・12月・翌年2月です。

 

2.【新築マンション】固定資産税の計算方法

固定資産税の計算を行う際は、下記の計算式を使用します。

固定資産税の計算式
固定資産税=課税標準額×税率

固定資産税の計算では、まずは固定資産の課税標準額を求めます。課税標準額とは、固定資産評価基準に基づいて算出される固定資産税評価額のことです。土地・家屋の場合は、3年ごとに適正価格への評価替えが定められています。

次に、求めた課税標準額に税率を乗じて、固定資産税を算出します。一般的に用いられる税率は1.4%の標準税率です。ただし、自治体によっては1.5%や1.6%の税率を課すケースもあります。マンションの固定資産税は土地・家屋のそれぞれで固定資産税を計算し、合計することで算出します。

出典:総務省「固定資産税」

 

2-1.土地:軽減措置を適用した固定資産税の計算式

土地の固定資産税評価額は、宅地・農地といった地目別での売買実例価額などをもとに算定します。宅地の場合は「地価公示価格の70%」が目安です。また、マンションの場合は土地部分を他の区分所有者と共有しているため、土地の固定資産税評価額は他の区分所有者との持分割合で按分する必要があります。

さらに、土地の固定資産税評価額に対しては住宅用地の特例が適用されます。住宅用地の特例とは、住宅用地のうち1戸あたり200平方メートル以下の部分は固定資産税評価額が6分の1に、200平方メートルを超えた部分は3分の1に減額される制度です。マンションは戸数が多いため特例を受けられる面積も広くなり、基本的に6分の1の減額措置を受けられます。

土地について、軽減措置を適用した固定資産税の計算式は下記の通りです。

新築マンションの土地における固定資産税の計算式
土地の固定資産税=持分割合で按分した土地の固定資産税評価額×税率×1/6

出典:総務省「固定資産税」

 

2-2.家屋:軽減措置を適用した固定資産税の計算式

新築マンションにおける家屋の固定資産税評価額は、一般的に建築費用の5~7割になることが多い傾向です。また、新築マンションでは新築住宅にかかる固定資産税の軽減措置を利用できます。通常の新築マンションは5年間、長期優良住宅のマンションは7年間の期間において、固定資産税が2分の1になります。

家屋については、軽減措置を適用した固定資産税の計算式は下記の通りです。

新築マンションの家屋における固定資産税の計算式
家屋の固定資産税=家屋の固定資産税評価額×税率×1/2

なお、軽減措置適用期間が終了した後は2分の1の軽減措置がなくなります。

出典:総務省「固定資産税」

 

3.3000万の新築マンションの固定資産税シミュレーション

3,000万円の新築マンションを購入した場合について、条件を下記の通りに想定して、固定資産税の計算シミュレーションを紹介します。

<新築マンションの条件>

購入価格 3,000万円
専有面積 100平方メートル
土地の固定資産税評価額 750万円
家屋の固定資産税評価額 1,600万円
固定資産税の税率 1.4%

まず土地・家屋の固定資産税は下記のように計算します。

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×1.4%×1/2=11万2,000円

最後に、土地と家屋の固定資産税を合計して、固定資産税の総額を算出します。

固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+11万2,000円=12万9,500円

紹介した条件の場合、軽減措置の適用期間中は1年あたり12万9,500円の固定資産税がかかります。

 

4.【中古マンション】固定資産税の計算方法

中古マンションの固定資産税を計算する際、土地の固定資産税の計算方法は、中古マンションであっても新築マンションの場合と変わりません。土地は経年劣化がなく、経年による土地評価の影響はないと見なされるためです。また、土地の持分が200平方メートル以下であれば、軽減措置を受けられます。

中古マンションの土地における固定資産税の計算式
土地の固定資産税=持分割合で按分した土地の固定資産税評価額×税率×1/6

一方で、家屋の固定資産税では新築マンションの場合とは異なる下記の計算式を使用します。

中古マンションの家屋における固定資産税の計算式
家屋の固定資産税=再建築価格評点×経年減点補正率×床面積×評点1点当たりの価額

再建築価格とは、対象家屋と同じ建物を新築した場合に要する建築費のことです。経年減点補正率は、家屋新築後の経過年数に応じた損耗を減価で表しています。再建築価格に経年減点補正率を乗じた金額を家屋の固定資産税評価額として、さらに税率を乗じることで家屋の固定資産税を算出する仕組みです。

ただし、再建築価格は物価変動などによって変わり、経年減点補正率の数値も年数によって変動するため、中古マンションの固定資産税の計算は簡単ではありません。

出典:総務省「固定資産評価のしくみについて(家屋評価)」

 

5.3000万の中古マンションの固定資産税シミュレーション

3,000万円の中古マンションを買った場合の固定資産税を、下記の条件において築10年・築20年・築30年に分けてシミュレーションします。経年減点補正率は法務省のホームページで発表されている数字を使用します。また、100円未満は切り捨てです。

<中古マンションの条件>

購入価格 3,000万円
建物構造 RC造
専有面積 100平方メートル
土地の固定資産税評価額 750万円
新築時の家屋の固定資産税評価額 1,600万円
固定資産税の税率 1.4%

<築10年の場合>

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×0.7397×1.4%=16万5,692円
固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+16万5,692円=18万3,100円

マンションは築5年(長期優良住宅の場合は築7年)を超えると、家屋の固定資産税の計算で軽減措置を利用できなくなります。

<築20年の場合>

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×0.5054×1.4%=11万3,209円
固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+11万3,209円=13万700円

<築30年の場合>

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×0.3059×1.4%=6万8,521円
固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+6万8,521円=8万6,000円

家屋の固定資産税評価額に関する経年減点補正率は、一定の年数までは築年数が経過するほど小さくなります。そのため、固定資産税の総額も築年数を重ねたマンションのほうが安くなるでしょう。

 

6.マンションにかかる固定資産税の負担を軽減する方法

新築・中古を問わず、マンションの固定資産税は数万~数十万の税負担がかかることにより、負担軽減のための対策が講じられています。ここからは、マンションにかかる固定資産税の負担を軽減する、3つの方法を紹介します。

 

6-1.手間や手数料のかからない納税方法がある

固定資産税の負担を少しでも軽減するためには、下記のような納税方法を選択するとよいでしょう。

・自動で引き落としがされる口座振替

口座振替は、一度手続きをすれば以降は自動で引き落としが行われます。固定資産税の納税にかかる手間が少なくなり、納税忘れも防げる方法です。

・固定資産税の納付でポイントが貯まるクレジットカード

クレジットカード納付は窓口などに出向く手間がかからず、カードによってはポイントも貯まる方法です。ただし、手数料として地方税お支払サイトのシステム利用料がかかる点には注意してください。

・ポイントが貯まり手数料もかからないアプリ決済

アプリ決済はスマートフォンから納税ができて、使用するスマートフォン決済アプリに応じたポイントが貯まる方法です。バーコード読み取り方式の場合は決済手数料もかかりません。

納税方法を工夫することで、納税のために窓口に出向いたり、手数料がかかったりするなどの負担を軽減できます。

 

6-2.リフォーム工事を行った場合に軽減措置がある

下記に挙げるリフォーム工事を行った場合、固定資産税の3分の1が減額される可能性があります。

<バリアフリー改修工事>

個人が築10年以上を経過した住宅で一定のバリアフリー改修工事を行った場合に、固定資産税の軽減措置を受けられます。

固定資産税の減額率 翌年度分の固定資産税から3分の1が減額
対象の工事
  • 通路や出入口の幅の拡張
  • 階段の勾配の緩和
  • 浴室の改良
  • トイレの改良
  • 部屋や廊下などへの手すり設置
  • 床の段差解消
  • 出入口の戸の改良
  • 滑りにくい素材の床への取り替え

出典:国土交通省「バリアフリー改修に係る固定資産税の減額措置」

なお、適用を受けるためにはバリアフリーを必要とする人の居住など、さまざまな要件を満たす必要があります。

<省エネ改修工事>

2014年4月1日以前に建築された住宅で一定の省エネ改修工事を行った場合に、固定資産税の軽減措置を受けられます。

固定資産税の減額率 翌年度分の固定資産税から3分の1が減額(120平方メートルの床面積相当分まで)
対象の工事
  • 窓、床、壁、天井などの断熱改修
  • 高効率空調機の設備設置
  • 高効率給湯機の設備設置
  • 太陽熱利用システムの設備設置
  • 太陽光発電システムの設置

出典:国土交通省「省エネ改修に係る固定資産税の減額措置」

省エネ改修工事の適用を受ける場合も、さまざまな要件を満たさなければならない点に注意しましょう。

 

6-3.大規模修繕工事を行った場合に軽減措置がある

マンションの大規模改修工事を行った場合は、6分の1から2分の1の固定資産税の軽減措置を受けられます。

固定資産税の減額率 翌年度分における家屋の固定資産税が6分の1から2分の1の範囲内で減額
対象となるマンションの要件
  • 築20年以上である
  • 総戸数が10戸以上である
  • 過去に長寿命化工事を行っている
  • 長寿命化工事に必要となる積立金を確保している
  • など

工事の要件
  • 外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事などの長寿命化工事を実施している
  • 2023年4月1日~2025年3月31日の間に工事が完了する

出典:国土交通省「管理計画認定マンションの場合」

なお、実際の減額率は該当住宅の所在する市町村が6分の1から2分の1の範囲内で決定します。

 

7.【新築・中古】3000万のマンションの固定資産税を知るには?

3,000万円のマンションでかかる固定資産税は、下記の方法で確認できます。

・新築マンションの場合

新築マンションは建物完成前に購入申し込みを行うことがほとんどであり、マンション購入前に明確な固定資産税評価額を算出できません。購入予定のマンションにモデルルームがある場合は訪問して、担当者に固定資産税がいくらかかるかを尋ねるとよいでしょう。類似する条件のマンションなどから、固定資産税の目安を教えてもらえます。

・中古マンションの場合

中古マンションでは固定資産税評価額がすでに算出されています。不動産会社の担当者に尋ねれば、明確な固定資産税を教えてもらうことが可能です。

新築と中古のどちらにしても、不動産会社の担当者に確認すれば、固定資産税の目安が知れるでしょう。

 

8.マンションの固定資産税に関する注意点

固定資産税は計算式に当てはめて算出することはできるものの、実際の支払い時にはシミュレーション通りにはいかないことがあります。最後に、マンションの固定資産税に関する3つの注意点を解説します。

 

8-1.軽減措置の終了後は固定資産税が上がる可能性がある

新築マンションでは家屋の固定資産額を2分の1にする軽減措置が適用されるため、購入当初は固定資産税の総額を安く抑えられます。しかし、軽減措置の終了後は2分の1の減額がなくなり、固定資産税が上がる可能性があります。軽減措置が適用される期間は通常のマンションは5年間、長期優良住宅のマンションでは7年間です。

そのため、新築マンション購入の際は、軽減措置が適用されている期間中の固定資産税納税額だけでなく、適用終了後の納税額についてもシミュレーションすることをおすすめします。もともとの納税額を理解していれば軽減措置終了を見据えた資金計画ができ、固定資産税が上がったときにも滞りなく支払いを行えるでしょう。

 

8-2.年度途中で中古を買う場合は日割り計算になることがある

固定資産税は、1月1日時点で固定資産の所有権がある方に課税されます。新築マンションを年度途中に購入する場合であれば、基本的に固定資産税は翌年から支払うことになるでしょう。しかし、中古マンションの場合は固定資産税の支払いが翌年からになるとは限りません。中古マンションを年度途中で買うと、今年分の固定資産税が日割り計算になる場合があるためです。

たとえば、中古マンション購入の時期が4月末の場合、固定資産税12か月分のうち4か月分を売主が負担し、残りの8か月分は買主が負担することになります。実際には売主・買主が別々に納税するわけではなく、買主が負担する分の固定資産税額を売主に渡して、売主が納税者として固定資産税を納付します。

固定資産税の日割り計算は不動産取引上の慣例となっており、発生するケースは多いと言えます。また、固定資産税として売主に渡すお金は、中古マンションの価格の一部という扱いになり、売主が不動産会社の場合は課税対象になる点にも注意が必要です。

 

8-3.固定資産税を滞納すると最悪の場合は競売にかけられる

固定資産税を滞納すると延滞税などが発生し、最悪の場合は物件が競売にかけられるケースもある点に注意してください。固定資産税を滞納したときは、納付期限から20日以内に自治体の督促状が届きます。督促状は未納を確認し、附属の納付書による納付を促す書類です。督促状が届いた後も滞納している方には、催告書を送付するケースもあります。固定資産税の滞納をしていると延滞税が発生するため、本来の納付額よりも高額な納付が必要です。

また、督促状が届いてから10日以内に固定資産税の納付をしない場合、自治体は未納付者の財産を差し押さえることが可能です。差し押さえられる財産は預貯金と給与であり、差し押さえた財産をもって固定資産税の納付額に充当します。差し押さえた預貯金と給与だけでは固定資産税の支払いができない場合には、土地・建物といった不動産も差し押さえて競売にかけます。

そのため、固定資産税の支払いが難しい場合は、自治体の納税窓口に相談しましょう。納税期限の猶予や納税額の分割・減免などの措置が受けられる可能性があります。

 

まとめ

3,000万円のマンションを買ったときには、固定資産税が発生します。固定資産税は「課税標準額×税率」という計算式で算出できます。新築・中古を問わず、ある程度の金額はシミュレーションできますが、正確な納税額を知りたいときは不動産会社の担当者などに確認するとよいでしょう。

また、一戸建てに限らずマンションでも固定資産税の軽減措置を受けることが可能です。固定資産税は毎年払い続けるものなので、軽減措置も利用しながら、できるだけ負担のない方法で着実に納税しましょう。