不動産コラム

2025-01-24 18:09:17
販売中のモデルハウスは購入してもよい?メリットや注意点を紹介

モデルハウスは、住宅の具体的なイメージをつかんでもらうために住宅メーカーや不動産会社が用意している見学施設であり、住宅購入を検討する方にとって重要な情報源です。モデルハウスは一定期間の展示後に販売されることもあり、通常の住宅よりも相場が安く、設備も充実していることが多いため、購入を検討する人も増えています。

モデルハウスは、実際の住空間を体感した上で購入でき、「イメージと違った」という後悔が生まれにくいのも魅力の1つです。しかし、中古物件として扱われるため、購入を検討する際はデメリットにも目を向ける必要があります。

当記事では、モデルハウスの種類や購入時の注意点、メリットとデメリットを詳しく解説します。当記事を参考に、モデルハウスの特徴を正しく理解し、理想的な住まい選びに役立ててください。

 

1. モデルハウスとは?

モデルハウスとは、住宅メーカーや不動産会社が自社の住宅をよく知ってもらうために建てる見本用の住宅のことです。モデルハウスを見学することで、実際に建てられる住宅の間取りやデザイン、設備の仕様を実際に確認でき、パンフレットや設計図では分かりにくい住空間の広さや設備の使用感、家全体の雰囲気を把握できます。

モデルハウスは、単なる見本として建てられるだけでなく、一定期間が過ぎると居住用として販売されるケースもあります。こうした販売モデルハウスは新築ではないものの、魅力的な価格や条件で手に入る場合もあります。

 

1-1. モデルハウスの種類

モデルハウスには主に「住宅展示場のモデルハウス」と「分譲地のモデルハウス」の2種類があります。同じモデルハウスと言っても特徴は異なるため注意しましょう。

  • 住宅展示場のモデルハウス
    さまざまな住宅メーカーが集まる大規模な展示場に建てられるタイプです。住宅展示場のモデルハウスは、メーカーが自社の住宅をアピールするため、最新設備や高級な内装が採用されていることが多いのが特徴です。ただし、展示場に建てられているため、購入後は別に土地を用意し、一度解体して購入者が用意した土地に再建築する必要があります。
  • 分譲地のモデルハウス
    分譲地内に建てられているモデルハウスは、分譲地で販売される住宅の標準仕様をベースに作られており、実際に販売される物件とほぼ同じ設計がされていることが一般的です。分譲地にそのまま住むため、購入後に別途土地を探す必要がない点や、再建築の時間がかからない点がメリットです。

 

2. モデルハウスが販売されるタイミング

モデルハウスが販売されるタイミングは、設置場所によって異なります。

住宅展示場に設置されたモデルハウスは、一般的に建築後3~5年を目安に販売されます。住宅展示場のモデルハウスは、見学者に最新の設備やデザインをアピールする目的で建てられており、一定期間が経過すると、新たなモデルハウスと入れ替える必要があるためです。

一方、分譲地に建てられたモデルハウスは、その分譲地内の住宅が販売終了するタイミングや展示期間の終了後に販売されます。住宅展示場のモデルハウスよりも展示期間が比較的短く、住宅の劣化が少ないのが特徴です。

 

2-1. モデルハウス購入時の価格相場は?

モデルハウスは新築ではあるものの、展示用として一定期間使用されており、「中古物件」として扱われるのが一般的です。そのため、通常の住宅と比較しておおよそ1~3割ほど安く購入できることが多いです。

さらに、住宅展示場や分譲地のモデルハウスは、役割を終えた後、早期に売却するため、価格が市場価格より低めに設定されるケースもあります。

 

3. モデルハウスを購入するメリット

モデルハウスの購入には、価格以外にも複数のメリットがあります。スムーズな入居や、充実した設備・家具など、モデルハウスを購入することによるメリットを紹介するので、モデルハウスに興味のある方はぜひ参考にしてください。

 

3-1. 家電や設備が充実している

モデルハウスは見学者に住宅の魅力を伝えるため、最新の家電や高品質な設備が設置されている住宅が多くあります。高効率のエアコンや床暖房、最新型のキッチン設備などの他に、内装にも高級感のある素材やデザインが採用されていることもあります。

モデルハウスでは、展示時に使われていた設備や家電がそのまま引き渡されるため、購入者にとっては新たに設備を選んだりする手間や、最新の設備を導入するコストを削減できる点がメリットです。初期費用を抑えながら、快適な生活環境をすぐに始められるでしょう。

 

3-2. 実際の住宅を見られる

モデルハウスは見学用として実際に建てられている住宅であり、図面やパンフレットでは分かりにくい間取りや空間の広がり、生活動線などを体感できます。また、建物の仕様や品質を直接確認できるため、「購入後にイメージと違った」といったトラブルを回避しやすくなります。

一般的なモデルハウスは、生活をイメージしやすいように家具やインテリアが配置されているので、自分が住む家をきちんと確認した上で購入したい方にはぴったりな選択肢です。

 

3-3. すぐに住み始められる

分譲地に建てられているモデルハウスの場合、展示期間が終了するとすぐに購入可能な状態になり、通常の新築住宅のように建築期間を待つ必要がありません。購入後の引っ越しや住み始めるまでの期間が短いので、さまざまな事情によって「急いで住まいを確保したい」という方にとっては大きなメリットです。

また、モデルハウスは設備があらかじめ決まっており、家具や家電が揃っているケースも多くあります。設備や仕様をどうしようか悩んだり、家具や家電を検討・購入しにいく手間がかからないため、住宅購入後に大きな準備をすることなく新生活をスタートできます。モデルハウスは入居の準備を短期間でスムーズに行いたい方に向いています。

 

3-4. 立地が良いことが多い

分譲地のモデルハウスは、多くの人にとって見やすいよう分譲地の中でも立地の良い場所に建てられることが一般的です。アクセスや接道条件がよかったり、日当たりや景観も他の区画よりも良い条件で建てられていたりするケースも多く見られます。

立地の良さは生活の快適さや資産価値にも影響するため、モデルハウス購入の重要なメリットと言えます。

 

4. モデルハウスを購入するデメリット

モデルハウスにはさまざまなメリットがあるものの、同時にいくつか注意点も存在します。どうしても多くの人が見学に訪れた住宅にはなってしまうため、気になる方はデメリットもきちんと把握しておきましょう。

ここでは、モデルハウス購入のデメリットについて詳しく解説します。

 

4-1. 中古物件の扱いになる

モデルハウスは一定期間展示用として利用されていたため、新築ではなく「中古物件」として扱われます。中古物件を購入する場合、購入者は住宅ローンを組む際に新築物件特有の優遇措置が受けられない可能性があります。不動産市場においても中古物件として評価されるため、将来的な資産価値は新築よりも低くなることが予想されます。

住宅の価値だけでなく、住宅そのものについても、展示期間中に見学者が頻繁に出入りしているため、建物や設備の使用感がある場合も少なくありません。「新築の一戸建てを購入したい」という方は、モデルハウスの購入は避けたほうがよいでしょう。

 

4-2. 住宅瑕疵担保責任保険に加入できないことがある

住宅瑕疵担保責任保険とは、新築住宅に設計ミスや施工ミスによる瑕疵(欠陥)があった際、修理や補償のための保険金が支払われる制度です。

出典:国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」

しかし、建築後に一定期間が経過しており、中古物件という扱いになってしまうモデルハウスは、住宅瑕疵担保責任保険の加入対象外となる場合があります。保険に加入できない場合、購入後に住宅の不具合が見つかった際に補償が受けられず、修繕費を全額自己負担しなくてはなりません。

思わぬ修繕費の発生を避けるためにも、購入前に瑕疵担保責任保険の適用状況を必ず確認しましょう。また、修繕費が発生しないかどうかを知るために、目に見えない部分まで住宅の状態を入念にチェックすることも大切です。

 

4-3. 家電や設備が劣化していることがある

モデルハウスは見学者が頻繁に訪れるため、家電や設備が使用される機会が多く、劣化している場合があります。例えば、キッチンやトイレの水回り設備や、エアコンや照明などの電化製品は、展示中も長時間稼働していたことが予想されます。

また、展示期間が長い場合は、建物の外装や内装にも経年劣化が見られることがあります。購入後に修繕や交換が必要になる場合があるため、設備の状態を事前に確認し、追加費用が発生するかどうか確認しておきましょう。

 

4-4. 設備が使用されているケースがある

モデルハウスでは、訪れた見学者が実際の使用感を体験できるよう、設備が見学者に使用されています。特に、モデルハウスへの宿泊プランが提供されている場合は、水回りや家具などを不特定多数の人が使用しています。使用感が残っていたり、家具や設備に傷や汚れが残っていたりする可能性は否定できません。

新品の設備にこだわりがある場合はデメリットとなる可能性があるため、どの設備が使用されているのか事前に確認し、納得の上で購入を決めることが必要です。

 

4-5. 立地は選べない

分譲地のモデルハウスは、あらかじめ住宅メーカーや不動産会社が選定した土地に建てられるため、購入者が立地を自由に選ぶことはできません。比較的立地の良い場所に建てられているケースが多いものの、中には通勤や通学に不便な場所だったり、周辺環境が希望と合わなかったりすることもあります。

また、分譲地内に建てられたモデルハウスの場合、周辺の家との距離や配置が固定されているため、購入者の理想的な住環境とは異なっている場合があります。理想とする生活ができるかどうか、事前に地域や環境を十分に確認することが重要です。

 

4-6. 人気のモデルハウスは抽選になることがある

モデルハウスは価格や設備に多くの魅力があることから、人気の物件も多く、購入希望者が多かった場合には抽選が行われるケースがあります。抽選に外れた場合は別の物件を探す必要があることは覚えておきましょう。

特に好立地で設備が充実しているモデルハウスは競争率が高くなる傾向があります。抽選のモデルハウスを避けたい場合は、先着順で販売される物件を検討するなどの工夫が必要です。

 

4-7. 住宅展示場のモデルハウスは土地を用意する必要がある

住宅展示場のモデルハウスは展示場内に建てられているので、購入した後はそのままの場所で住むことはできません。別途土地を用意し移築する必要があるので、土地を探す分の手間やコストがかかります。

特に建物の再建築には、追加費用がかかるだけでなく、移築先で建物がそのまま使えるかどうかの確認も必要です。また、住宅展示場に建てられているモデルハウスは、購入希望者にアピールするために間取りが広くなっていることも多く、その分土地を探す際も広い土地が必要となります。

住宅展示場のモデルハウスを購入するときは、土地費用も含めた総額を考慮しましょう。

 

5. モデルハウスを購入する際の注意点

モデルハウスを購入した後に、「イメージと違う点があった」「思ったよりも費用がかかってしまった」などの想定外の事態が起こらないようにするために、いくつかの注意点があります。ここでは、4つの注意点と解決方法を詳しく解説します。

 

5-1. 焦らずに検討する

モデルハウスの購入を検討する際は、価格の魅力や設備の充実度だけを確認して購入を決めるのではなく、十分に時間をかけて慎重に判断することが重要です。

価格が通常の物件よりも安価に設定されているモデルハウスは人気物件が多く、早い者勝ちや抽選で決まるケースもあります。「早く決めなければ他の人に購入される」と焦ってしまう方もいるかもしれませんが、物件購入は人生の中でも大きな買い物であり、家族のライフプランや予算、将来の生活スタイルを総合的に考えて判断する必要があります。

また、焦りから契約を急いでしまうと、後から重要な条件や不具合に気づくリスクがあります。内覧や条件確認を徹底し、設備や安全性・補償面をしっかり確認した上で、納得してから購入を決断することが大切です。

 

5-2. 住宅に欠陥がないか確認する

モデルハウスは一定期間、見学用として使用されていたため、目に見える場所だけでなく、内装や設備、構造に目立たない欠陥がある場合があります。購入前には専門家や施工業者に依頼して、住宅の状態を入念にチェックしましょう。ホームインスペクションを依頼し、プロにしっかりチェックしてもらうこともおすすめです。特に水回りや基礎部分、屋根の状態などは、経年劣化や見えない問題が潜んでいる可能性があるため、注意が必要です。

モデルハウスは中古物件扱いとなり、住宅瑕疵担保責任保険に加入できない場合もあるため、購入前に欠陥がないか確認することは特に重要です。購入後に予期せぬ修繕費が発生するリスクを軽減するためにも、事前の点検を怠らないようにしましょう。

 

5-3. 周辺環境や立地を確認する

モデルハウスの建物自体が魅力的であっても、周辺環境や立地が購入者の希望に合わない場合もあります。購入前に地域の交通アクセス、公共施設、商業施設、学校などの利便性を必ず確認しましょう。

分譲地であっても自分で見つけた土地であっても、地盤の強さや浸水リスクなど、災害の危険性については確認しておくと安心です。また、分譲地のモデルハウスを購入し、モデルハウスが建てられている場所にそのまま居住する場合は、風通しや日当たりをしっかり確認するチャンスでもあります。騒音やにおいなど、立地特有の環境面もチェックしておきましょう。

また、近隣住民との関係や、将来的な開発計画がどのように行われるかも調べておきたいポイントです。特に、分譲地内のモデルハウスの場合は、全体の街並みや雰囲気が生活に大きく影響を与えます。どのような人たちが入居するのか、周囲の治安はどうかなどを合わせて確認しましょう。立地や周辺環境を事前にしっかりチェックしておけば、購入後の生活の満足度を高められます。

 

5-4. キャッシュフローを確認する

モデルハウスは通常の住宅よりも相場価格は安いものの、購入後に新築住宅では発生しない修繕費や移設費などが必要となるケースもあります。どのような費用が発生するかを把握し、キャッシュフローをしっかりと確認しておきましょう。

また、住宅ローンの支払いだけでなく、固定資産税や保険料などのランニングコストも考慮する必要があります。購入を検討する際には、現在の収入や将来の支出を見越し、無理のない資金計画を立てることが大切です。資金計画が不十分だと、せっかくの購入が家計を圧迫するリスクがあります。信頼できる金融機関や専門家のアドバイスを受けながら、具体的な予算を把握しましょう。

 

まとめ

モデルハウスは、通常の新築住宅よりも安価で設備が充実しているなど、独自のメリットが多くあります。実際に住宅展示場や分譲地に建てられているものを購入することになるので、自分が住む家を実際に確認した上で、すぐに住み始められるのも嬉しいポイントです。

しかし、モデルハウスは中古物件扱いになり、なおかつ住宅瑕疵担保責任保険の対象外となるリスクがあるなど、注意すべき点も少なくありません。購入を検討する際には、価格や設備だけに目を奪われず、住宅の状態や周辺環境、必要なコストなどを総合的に確認しましょう。

理想的な住宅を、できるだけ価格を抑えて手に入れるためには、焦らずに慎重な判断を行い、専門家のアドバイスも参考にしながら、自分や家族にとって最適な選択を行うことが大切です。