不動産コラム

2025-02-19 18:34:39
建ぺい率・容積率とは?調べ方や計算方法・注意点を分かりやすく解説

マイホームの購入を検討している際に、家の間取りやデザイン、憧れのインテリアなど、ワクワクする想像が膨らむ人がほとんどでしょう。一方で、理想の住まいを実現するためには、見た目だけでなく、土地と建物の関係を規定する重要なルールを知っておく必要があります。その1つが「建ぺい率」と「容積率」です。

この記事では、これから家づくりを考えている方向けに、建ぺい率と容積率について、分かりやすく丁寧に解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

1. 建ぺい率・容積率とは?

建ぺい率・容積率は、家づくりや物件選びをする際に、知っておくべき重要なポイントの1つです。建ぺい率・容積率の割合によって、その土地にどれくらいの大きさの建物を建てられるのかが決まります。

ここでは、建ぺい率と容積率の概要と違いを分かりやすく解説します。

 

1-1. 建ぺい率とは

建ぺい率とは、「敷地面積に対する建築面積の割合」です。簡単に言うと、土地を真上から見たときに、建物がどれくらいの面積を占めているかを示します。

【建ぺい率の制限の目的】

  • 建物が密集しすぎると、火災が発生した際に延焼しやすくなります。建ぺい率を制限することで、建物同士の間に一定の空間を確保し、延焼を防ぐ効果があります。
  • 建物が密集すると、日当たりが悪くなったり、風通しが悪くなったりします。建ぺい率を制限することで、良好な住環境を維持できます。
  • 建物が過密に建ち並ぶのを防ぎ、良好な都市景観を形成する目的もあります。

 

1-2. 容積率とは

容積率とは、「敷地面積に対する延床面積の割合」です。延床面積とは、建物の各階の床面積を合計した面積です。

【容積率の制限の目的】

  • 建物が過度に大きくなるのを防ぎ、人口の過密を防ぐ目的があります。
  • 建物が大きくなると、道路や上下水道などのインフラへの負荷が増大します。容積率を制限することで、インフラへの過剰な負担を抑えられます。
  • 建ぺい率と同様、容積率を制限することで、日照・風通し・景観などを確保し、良好な都市環境を維持する目的があります。

 

2. 建ぺい率と容積率の調べ方

建ぺい率と容積率の上限は、行政が指定した用途地域の種類によって決められています。都市計画法で定められた数値の中から行政が指定するため、同じ用途地域でも建ぺい率や容積率が異なることがあります。

用途地域地域の特徴建ぺい率(%)容積率(%)
第1種低層住居専用地域小さな住宅や小学校、中学校などを建てられる地域30・40・50・6050・60・80・100・150・200
第2種低層住居専用地域第1種に加えて、コンビニなどの小さなお店も建てられる地域
田園住居地域農業の活用を促進しながら、それに調和した低層住宅の良好な住環境を守るために指定された地域
第1種中高層住居専用地域住宅のほか、高校や大学、中規模の店舗なども建てられる地域100・150・200・300・400・500
第2種中高層住居専用地域第1種に加えて、中規模のオフィスビルや1500平方メートルまでの店舗も建てられる地域
第1種住居地域建てられる店舗に制限がある地域50・60・80
第2種住居地域第1種に加え、パチンコ店やカラオケ店も建てられる地域
準住居地域道路沿いの特性に適した業務の利便性を高めながら、調和した住環境を守るために指定された地域
準工業地域軽工業の工場やサービス施設が混在する地域
近隣商業地域近隣の住民が日用品を購入する店舗などの利便性を高めるための地域60・80
商業地域住宅や小規模工場、飲食店、銀行、百貨店、映画館などが建てられる地域80200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300
工業地域住宅、店舗、すべての工場が建てられる地域50・60100・150・200・300・400
工業専用地域すべての工場が建てられる専用の地域30・40・50・60
用途地域の定めのない地域用途制限がない地域30・40・50・60・7050・80・100・200・300・400

参考:大阪市「地域地区(用途地域等)について」

参考:厚木市「用途地域(ホームページから検索可能です)」

 

2-1. 市区町村に問い合わせる・WEBサイトで確認する

建ぺい率と容積率の調べ方として、最も確実なのは、その土地を管轄する市区町村の役所に問い合わせることです。

また、多くの自治体では、都市計画情報をWebサイトで公開しています。「〇〇市 都市計画図」「〇〇町 用途地域」などのキーワードで検索してみましょう。Webサイトでは、用途地域、都市計画図、建築基準法関係例規集などが確認できることが多いです。ただし、Webサイトの情報は更新が遅れている場合もあるため、最新の情報ではない可能性がある点に注意しましょう。

 

2-2. 不動産会社や建設会社に問い合わせる

また、土地を購入する際や、家を建てる際に、不動産会社や建設会社に問い合わせることもおすすめです。土地の売買を行う不動産会社は、その土地の建ぺい率・容積率などの情報を把握しています。

また、家の建築を依頼する予定の建設会社(工務店やハウスメーカーなど)は、建築基準法や都市計画法に詳しい専門家です。土地の情報を提供することで、建ぺい率・容積率だけでなく、建築可能な建物の規模や形状などについてもアドバイスをもらえます。

ただし、不動産会社や建設会社の担当者によって、知識や情報提供のレベルに差がある場合があること、また、詳細な調査を依頼する場合などは、無料でない場合があることも留意しておきましょう。

 

3. 建ぺい率と容積率の計算方法

建ぺい率と容積率を計算する上で、まずは敷地面積・建築面積・延床面積の理解が必要です。

敷地面積は、建築物を建てる敷地の面積です。建築面積は、建物を真上から見たときの面積のことを言います。延床面積とは、建物の各階の床面積を合計した面積です。

 

3-1. 建ぺい率の計算方法

建ぺい率は、下記の計算式で求められます。

建ぺい率(%)= 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100

例えば、100平方メートルの土地(敷地面積)に40平方メートルの家(建築面積)が建っている場合、建ぺい率は下記のようになります。

建ぺい率(%)= 40平方メートル ÷ 100平方メートル × 100 = 40%

建ぺい率を計算する際の建築面積は、建物を真上から見たときの面積、つまり「水平投影面積」です。2階建て以上の建物の場合、各階の床面積が異なることがありますが、その中で最も面積が広い階の面積を建築面積として用います。

都市計画において、市街地における火災の危険を防除するために「防火地域」や「準防火地域」が指定されている場合があります。防火地域の場合は耐火建築物が、準防火地域の場合は耐火建築物と準耐火建築物が、建ぺい率緩和の対象です。具体的には、建ぺい率の上限に10%が加算されます。

 

3-2. 容積率の計算方法

容積率は、下記の計算式で求められます。

容積率(%)= 延床面積 ÷ 敷地面積 × 100

例えば、100平方メートルの土地(敷地面積)に、1階が70平方メートル、2階が40平方メートルの家を建てる場合、計算は下記のようになります。

容積率(%)= 110平方メートル(1階70平方メートル + 2階40平方メートル) ÷ 100平方メートル × 100 = 110%

なお、玄関ポーチ、バルコニー・ベランダ、ロフト、出窓など、 建築基準法上、延床面積に算入されない部分があります(一定の条件あり)。また、建築基準法では、地下室や駐車場などの特定の用途に使用される部分について、容積率の緩和措置が設けられています。

 

4. 建ぺい率60%・容積率200%で建てられる家の大きさ

敷地面積が100平方メートルの第1種低層住居専用地域に家を建てる場合を想定し、前面道路の幅員が12m未満、建ぺい率60%、容積率200%の土地に建てられる家の大きさをシミュレーションします。

建築面積・延床面積は以下の通りです。

建築面積 = 敷地面積 × 建ぺい率 = 100平方メートル × 60% = 60平方メートル

延床面積 = 敷地面積 × 容積率 = 100平方メートル × 200% = 200平方メートル

上記の計算から、建築面積は60平方メートル以内、延床面積は200平方メートル以内ということが分かります。3階建ての家を建てる場合、1階は建築面積の上限である60平方メートル・2階は50平方メートル・3階は30平方メートルなどのシミュレーションが考えられます。

なお、前面道路の幅員が12m未満の場合、容積率に制限が加わる場合があります。これは、道路幅員が狭いと、建物が大きくなりすぎると日照や通風が悪くなるためです。この制限を計算するために用いられるのが「容積率低減係数」です。

第1種低層住居専用地域では、容積率低減係数は40%と定められていることが多いです。つまり、前面道路の幅員(メートル単位)に40を掛けた数値が、容積率の限度となる場合があります。

例えば、前面道路の幅員が6mの場合、容積率の限度は下記の通りです。

容積率の限度 = 6m × 40 = 240%

今回の例では、指定容積率が200%であり、道路幅員による容積率の限度(仮に6mの道路幅員と仮定すると240%)よりも小さいため、指定容積率の200%が適用されます。

 

5. 建ぺい率と容積率をオーバーすると建築基準法違反になる

建ぺい率や容積率の基準をオーバーしている場合、その建物は建築基準法に違反する「違反建築物」または「既存不適格建築物」となります。

出典:e-Gov 法令検索「建築基準法」

違反建築物は、建築確認申請が通らなかったり、建築後に是正命令を受けたりする可能性があります。また、既存不適格建築物は、建築当時は適法であったものの、その後の法改正や都市計画の変更によって現行の基準に適合しなくなった建物のことです。

これらの建物は、増改築を行う際に制限を受けるなど、将来的に不利益を被る可能性があります。

 

まとめ

建ぺい率と容積率は、建築基準法によって定められた、建築物の規模を制限する重要な指標です。

建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合を示します。建築面積とは、建物を真上から見たときの面積、すなわち水平投影面積のことです。一方、容積率は、敷地面積に対する延床面積の割合を示します。

建ぺい率と容積率の上限は、用途地域によって大きく左右されるので、建築前に必ず確認する必要があります。詳しくは、担当の不動産会社やハウスメーカーに確認するのが安心です。