不動産コラム

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2024-08-02 17:31:25

古民家リノベーションには、古民家ならではのレトロな雰囲気を感じられたり、趣を残しつつ快適な住み心地が得られたりする多くのメリットがあります。リノベーションには一般的なリフォームのほか、一部を残してリフォームする方法や完全に解体してリフォームする方法などいくつか種類があり、費用相場が異なるのが特徴です。

当記事では、古民家や古民家リノベーションの概要、古民家リノベーションの魅力、費用相場、費用を抑えるポイント、注意点などを紹介します。古民家リノベーションに興味がある方や、工務店への依頼を考えている方は必見です。

 

1.古民家リノベーションとは?

古民家に関する明確な定義はないものの、一般的には「築50年を経過した木造軸組構法の伝統工法または在来工法の住宅」が古民家と呼ばれます。また、一般社団法人全国古民家再生協会では「建築基準法が定められた1950年時点ですでに伝統工法により建てられていた住宅」を古民家としています。

古民家の建造時期は遅くとも戦前であり、大正時代以前に建てられた古民家も少なくありません。そのため老朽化が進んでおり、そのまま住むには不安な点が多々あります。古民家リノベーションは、古民家らしい趣を残しつつ快適な住まいづくりを実現するためのリノベーションです。

 

2.古民家リノベーションの魅力

快適な住まいを手に入れるだけであれば、まず新築住宅やリフォーム済みの中古住宅が選択肢に入るでしょう。しかし古民家には新築住宅や中古住宅では味わえないメリットがたくさんあり、古民家をリノベーションして住む人も少なくありません。

次に、古民家リノベーションのおもな魅力について解説します。

 

2-1.古民家ならではのレトロな雰囲気がある

年数がたった木材特有の落ち着いた色合いと質感は、古民家ならではの魅力の1つです。天然素材である木にはリラックス効果があり、伝統的な和風の内装は多くの人を懐かしい気持ちにさせてくれます。

古民家では柱や梁の大部分が露出しており、木材本来の質感や形がそのまま生かされていることが少なくありません。木材の質感や形をなるべく生かすことで、壁や家具などを新調した後も古民家らしいレトロさを演出しやすくなります。

 

2-2.普遍的なデザインで流行に左右されない

服と同じく住宅にもトレンドがあり、トレンドを取り入れることで生活空間がおしゃれになり生活の利便性も高まります。しかし、トレンドにこだわりすぎた住宅はいずれ流行遅れになるばかりか、ライフスタイルの変化などによって住みにくくなるリスクもゼロではありません。

そもそも古いものである古民家は、トレンドに左右されない魅力を持っています。年月がたっても飽きる心配がなく一層趣深くなる古民家は、長く住み続けたい人にもぴったりです。

 

2-3.歴史的価値がある古民家を保護できる

ひとくちに古民家と言っても、家の構造や建材は地域によってさまざまです。古民家の活用は、地元の伝統文化や生活の知恵を次世代へ伝えるためのよい機会となります。古民家をカフェや宿泊施設などとして活用し観光客へアピールすることで、さらなる地域活性化につながる可能性もあります。

また、古民家を残すことは貴重な資材を保護するためにも重要です。古民家の柱や梁には樹齢数百年の立派な木材が用いられることも珍しくなく、同じ木材を再び用意することは簡単ではありません。古民家の柱や梁を残すリノベーションは、古材のリサイクルや解体時の廃棄物削減にも役立ちます。

 

2-4.趣を残しつつ快適な住み心地が得られる

古民家には「冬は寒くなりやすい」「耐震性や気密性が低い」などのデメリットがあるものの、ほとんどはリノベーションによってカバーできます。古民家らしい趣を残しつつデメリットをなくすことで、長く住み続けられる家づくりを実現できます。

古民家をリノベーションする場合、特に劣化が早く冷え込みやすいトイレ、キッチン、浴室などを重点的に改修することが少なくありません。高齢者や小さい子どもなどがいる場合は、段差をスロープにしたり階段に手すりをつけたりするバリアフリー工事もおすすめです。

 

2-5.自然と共生する暮らしができる

古民家に用いられる木材や土壁には吸湿性があり、室内の温度や湿度を快適に保つ作用があります。また、障子やふすまを開け放って家中に風を通せるのも古民家のメリットです。エアコンなどを使って室内を快適に保つこともできますが、古民家特有の構造と天然素材の力によってより快適かつエコな生活を実現できます。

多くの古民家は自然豊かな郊外にあり、日常生活の中で四季を感じられます。広い庭がある古民家も多く、家庭菜園やガーデニングなどにもぴったりです。

 

2-6.固定資産税を抑えられる

不動産を取得すると、固定資産税の納税義務が発生します。建物の固定資産税は建物自体の評価額によって決まるため、基本的に築年数が古い建物ほど安くなります。固定資産税額は原則として固定資産税評価額×標準税率1.4%で、古い木造住宅は経年減価補正によって最大80%減額されます。

出典:総務省「地方税制度|固定資産税」

出典:法務局「経年減価補正率表」

さらに多くの古民家が比較的地価の安い土地にあることも、固定資産税を抑えやすい理由の1つです。

 

3.古民家リノベーションの種類

古民家リノベーションにはいくつかの方法があり、建物の状態や使用目的によって適切な方法が異なります。最低限の工期とコストで快適な暮らしを実現し、かつ長く住み続けるための第一歩として、古民家リノベーションの種類について知っておくと安心です。

ここからは、古民家リノベーションの種類を4つ紹介します。

 

3-1.一般的なリフォーム

古民家以外の住宅にもよく実施されるリフォーム工事では、水回りの設備や床、外壁など一部の設備のみを新しくします。独特の趣を残すため、リフォーム後のデザインを古民家らしくするとよいでしょう。

ただし、このリフォーム方法は劣化やゆがみの激しい古民家には不向きです。建物の老朽化が激しい場合は、安全性向上のために他のリフォーム方法を検討しましょう。

 

3-2.半解体再生リフォーム

半解体再生リフォームは、古民家の屋根・壁・床を取り外して構造体を修正または補強してから再度組み立てる方法です。一旦骨組みのみの状態にするため、スケルトン解体再生リフォームとも呼ばれます。古民家の原型を生かしつつ建物のゆがみや床の沈みなどを修正でき、古民家リフォームにおいて多く採用されています。丈夫なコンクリート基礎を作って建物全体の強度を高めることも可能です。

 

3-3.全解体再生リフォーム

全解体再生リフォームは、古民家を完全に解体して構造体やその他の部材をクリーニングしてから再度組み立てる方法です。全解体再生リフォームが必要な古民家では多くの場合構造体が劣化しており、古い構造体を新しい構造体で補修・補強してから組み立てます。多くの部材をリサイクルしつつ新しい部材を用いることで、古民家らしさを残しつつ耐震性や気密性を高めることが可能です。

 

3-4.移築再生リフォーム

移築再生リフォームは、古民家の場所を移動してからリフォームする方法です。もとの古民家の部材をほぼすべて再利用する場合は完全移築リフォーム、古民家の部材の一部と新しい部材を使う場合は部分移築リフォームと呼ばれます。また、強度が高い構造体のみを再利用する構造体移築リフォームも部分移築リフォームの一種です。

他府県への移築も可能な移築再生リフォームでは、「思い入れのある実家で暮らしたいが、仕事があり都会から離れられない」といったニーズにも応えられます。

 

4.古民家リノベーションの費用相場

古民家リノベーションの費用相場は、工事内容によって大きく異なります。リノベーション方法ごとの大まかな費用相場は、次の通りです。

リノベーションの方法 費用相場
一般的なリフォーム 約100万~2,000万円
半解体再生リフォーム 約1,000万~2,000万円
全解体再生リフォーム 約2,000万~3,000万円
移築再生リフォーム 約3,000万~4,000万円

一般的なリフォームの工事内容は古民家以外の住宅のリフォームと大差なく、他のリフォーム方法と比べて工事を要する部分が少ないため、数百万円から始められます。半解体再生リフォームの場合、古民家のどの部分がどれだけ劣化しているかによって工事内容や費用が大きく変わります。

全解体再生リフォームは一般的なリフォームや半解体再生リフォームと比べて工期が長く、費用も高めです。全解体再生リフォームと同じ工事に加えて部材の長距離運搬を要する移築再生リフォームは、全解体再生リフォームよりもさらに工期とコストがかかります。

 

5.古民家リノベーションの費用を抑えるには?

古民家リノベーションには高い費用がかかりますが、工夫次第で費用を抑えられます。工事の進め方や依頼先を厳選し、補助金制度や減税制度をうまく活用しながら、効率よくリノベーションプランを立てましょう。

 

5-1.使える部分は残してリノベーションする

古民家の多くは老朽化が進んでいるものの、すべての構造体や設備が使えないわけではありません。使える部分はできるだけ残して古くなった部分や使いにくい部分だけをリノベーションすることで、余分な出費を抑えやすくなります。

工務店によっては、設備や建材を依頼主自身が用意する「施主支給」も可能です。もともと住んでいた家の設備や安く譲り受けた設備を転用したり、安い設備を自分で探して購入したりしてもコスト削減に役立ちます。

 

5-2.補助金を活用してリノベーションする

古民家リノベーションに活用できる補助金は、耐震・省エネ・バリアフリーに大別されます。それぞれの補助金について、国や自治体の事例とともに解説します。

古民家は耐震基準が強化された1981年以前に建てられており、耐震性が十分ではない場合がほとんどです。安心して暮らし続けるためにも、住宅の耐震診断や耐震補強工事の補助金制度を活用しましょう。

【耐震補強に関する補助金】

・長期優良住宅化リフォーム推進事業

住宅性能向上などを目的として改修工事を行い、かつ工事後の住宅性能が一定の基準を満たすと、最大80万円の補助金が支給されます。購入した住宅をリフォームする場合などは最大50万円が加算されます。

出典:国立研究開発法人 建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業」

・ひょうご住まいの耐震化促進事業

兵庫県では、住宅の耐震性向上を目的とした建て替え工事や改修工事に対して、補助金を支給しています。補助金額や補助内容の詳細は自治体によって異なりますが、簡易耐震診断の結果に沿って工事内容を決定し、工事契約前に自治体窓口へ申請することが受給の条件です。

出典:兵庫県「ひょうご住まいの耐震化促進事業」

・旧耐震の耐震診断費用の助成

足立区では、1981年5月以前に建てられた木造住宅に対し、耐震診断費用と耐震改修工事費を補助しています。木造戸建住宅の耐震診断費用補助額は最大30万円、耐震改修工事費の補助金額は工事費用の9割または150万円のいずれか少ない額です。

出典:足立区「旧耐震の耐震診断費用の助成」

気密性の低い古民家で夏は涼しく冬は温かい空間づくりを叶えるためには、断熱対策が欠かせません。リフォームによって住宅の断熱性を高めることで電気代を抑えやすくなり、省エネや省CO2化にも役立ちます。

【省エネに関する補助金】

・既存住宅における断熱リフォーム支援事業

既存住宅に対し、高性能建材を用いた断熱改修工事を支援します。戸建住宅は120万円/戸を上限に補助対象経費の1/3の金額が支給され、工事内容によってはさらに加算されます。

出典:公益財団法人北海道環境財団「【全国対象】既存住宅の断熱リフォーム支援事業」

・子育てエコホーム支援事業

エコホーム支援事業者との契約によって行われる開口部や外壁などの断熱改修工事が補助対象となります。最大合計補助額は20万円で、一定の条件を満たすと最大60万円まで引き上げられます。

出典:国土交通省「子育てエコホーム支援事業」

・戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業

ZEH住宅とは、太陽光発電や省エネ設備などの活用によってエネルギーの生産量が消費量を上回る住宅です。戸建住宅の断熱リフォームを行う場合、工事費の1/3を補助します(上限120万円/戸)。また、蓄電池などを設置すると補助が加算されます。

出典:環境省「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」

高齢者の事故の多くは家の中で発生すると知られており、小さな段差や滑りやすい床などが事故につながることも少なくありません。高齢の家族と同居する場合は、補助金を活用してバリアフリー化もしておくと安心です。

【バリアフリーに関する補助金】

・介護保険による住宅改修費支給

要介護者などがいる家のバリアフリー改修工事に対し、工事費が補助されます。補助金額は、支給限度基準額の9割となる18万円が上限です。制度を利用したい場合は、担当のケアマネジャーなどに相談しましょう。

出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修」

・高齢者住宅改修費給付事業

大阪市の高齢者住宅改修費給付事業は、日常生活の利便性向上を目的として介護保険による住宅改修と同時に行われ、かつ介護保険による住宅改修費用の給付対象外となる工事が補助対象です。市民税課税世帯に対しては工事費用のうち最大5万円、市民税非課税世帯などに対しては最大30万円が補助されます。ただし、高齢者本人が市民税納税者の場合は対象外です。

出典:大阪市「高齢者住宅改修費給付事業」

・介護予防高齢者住環境改善支援事業

さいたま市では、要介護・要支援認定を受けていない高齢者のいる世帯で、転倒事故防止などのための住宅改修工事費用を補助しています。介護保険料第2段階までの場合は対象経費と同額または15万円、第3段階以上の場合は対象経費の2/3または10万円のいずれか少ない額が補助されます。

出典:さいたま市「介護予防高齢者住環境改善支援事業について」

 

5-3.減税制度を利用してリノベーションする

耐震、バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化などを目的としてリフォームを行うと、減税制度を利用できます。所得税の減税制度は次の3種類に大別され、利用するローンや工事の種類によって利用できる制度および控除額が変わります。

・リフォーム減税(投資型減税)

ローンを利用しない、または償還期間5年未満のローンを使用する場合に利用できます。控除期間は1年です。

・リフォーム減税(ローン型減税)

償還期間5年以上のローンを使用する場合に利用できます。控除期間は5年です。

・住宅ローン減税

償還期間10年以上のローンを使用する場合に利用できます。控除期間は10年です。

出典:住宅リフォーム推進協議会「リフォームの 減税制度」

「耐震工事とバリアフリー工事」などのように複数の対象工事を行った場合、それぞれの工事に対応する減税制度を併用できる場合があります。また、所得税の控除制度と固定資産税の減額制度の併用も可能です。親や祖父母などから贈与された古民家に住む場合は、贈与税の非課税措置も忘れずにチェックしましょう。

 

5-4.優先順位を決める

予算にあまり余裕がない場合、無理に家全体を改修する必要はありません。リノベーションのコストを抑えたい場合は、はじめに優先順位を決めるのがポイントです。保存状態のよい部屋などは、内装を新調するだけで使いやすくなることも少なくありません。

また、長期間かけて徐々にリノベーションすることも1つの方法です。まずは老朽化しやすい水まわりやよく使う部屋などに絞って改修し、ライフスタイルの変化に合わせて段階的に改修することも検討しましょう。

 

5-5.地元のリフォーム店に依頼する

大手工務店ほど宣伝広告費や人件費をかけていない地元工務店にリノベーションを依頼すれば、コスト削減に役立ちます。土地の特性や気候に合うプランを提示してもらいやすいほか、地元の建材を使って輸送費を抑えられるのも大きなメリットです。

また、自社施工店が多いのも地元工務店の特徴です。自社施工店に依頼すれば下請け業者への支払いが発生せず、さらに打ち合わせや連絡もスムーズにできるため、より工事の満足度を高めやすくなります。古民家が多い地域であれば、古民家リフォームの施工実績が多い工務店を探しやすいでしょう。

 

6.古民家リノベーションで注意するポイント

古民家をリノベーションする際に耐震補強や断熱工事を検討すべき場合は多々ありますが、その他にもいくつかの注意点があります。古民家のリノベーションにあたってチェックしたいポイントは、次の通りです。

・見えない部分の劣化に注意する

古民家には、軽い内見だけでは気づきにくいシロアリ被害や屋根裏の雨漏りなどのトラブルもありえます。入居後に新たなトラブルが見つかるのを防ぐため、事前にプロへ依頼してよく確認するのが大切です。

・長く住み続けたい場合は、バリアフリー工事も検討する

高齢の同居家族がいない場合も、バリアフリー工事がいらないとは限りません。古民家には段差の大きい階段や上がりかまちなどが多く、バリアフリー工事を検討しておくことで自分や家族の老後の不安軽減に役立ちます。

・一般的なリフォームよりも工期がかかる

古民家に多く用いられる太い建材や製材されていない建材の取り扱いには、高い技術が必要です。さらに建築当時の情報が残っていなかったり大規模な改修を要したりするケースが多いため、古民家のリフォーム工期は長くなる傾向があります。

・リノベーションしやすい古民家を探す

工事費用や手間を減らすには、劣化具合や耐震性の入念なチェックが欠かせません。また家の外観や間取りが好みに合うかも、長く暮らし続けるために重要なポイントです。できるだけ好みに合う古民家を探すことでそのまま活用できる部分が増え、リノベーションのコスト削減に役立ちます。

 

まとめ

古民家リノベーションは、古民家の持つ独自の魅力を最大限に引き出しつつ、現代の生活に合わせた快適な住空間を得られるリノベーションです。古民家リノベーションには、一般的なリフォームや半解体再生リフォーム、全解体再生リフォーム、移築再生リフォームなどの種類があります。

狭山不動産では、埼玉県(狭山市・入間川・所沢・川越市・飯能市・日高市)に密着した住宅のリフォームを承っています。埼玉県内で古民家リノベーションをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。


2024-08-02 17:04:00

マンションなどの不動産を購入すると発生する税金が「固定資産税」です。固定資産税は家屋や土地の価格に左右されるため、3,000万円のマンションを買ったらいくらになるのか気になる方は多いでしょう。

当記事では、3,000万円の新築マンション・中古マンションを購入した場合の固定資産税の計算方法や金額例、固定資産税の支払い負担を軽減する方法を説明します。3,000万円のマンション購入を考えている方は、固定資産税について理解を深めておきましょう。

 

1.固定資産税とは?

固定資産税とは、固定資産を所有している場合にかかる税金です。固定資産は大きく分けて土地・家屋・償却資産の3種類があり、下記のような固定資産を所有していると固定資産税の納税義務が発生します。

土地 住宅地・田んぼ・畑・山林・池沼・牧場・原野など
家屋 住宅・事務所・店舗・工場など
償却資産 法人が所有する構築物・飛行機・船・車両・備品など

出典:総務省「固定資産税」

固定資産税は使い道が定められていない税であり、徴収した市町村によって使い道が異なります。道路・学校といった公共施設の整備や、福祉サービスの拡充などが一般的な使い道です。

 

1-1.いつ誰がどこに支払う?

固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で課税対象の固定資産を保有している個人または法人です。固定資産税は市町村などの地方自治体によって課税される地方税であり、固定資産が所在している市町村に対して納税します。ただし、東京都23区内における固定資産税については、東京都に対する都税として納税します。

固定資産税の納税通知書が届く時期は4月~5月頃です。納税方法は、全額を一度に支払う「全額一括納付」と、支払いを4回に分ける「分割納付」の2通りを選ぶことができます。

また、固定資産税の納付方法は下記のような種類があります。

  • 市町村や銀行の窓口
  • 口座振替
  • コンビニ納付
  • クレジットカード
  • アプリ決済
  • Pay-easy
  • eLTAX

納税期日は納付先の自治体によって異なり、分割納付の場合は一般的に4月・7月・12月・翌年2月です。

 

2.【新築マンション】固定資産税の計算方法

固定資産税の計算を行う際は、下記の計算式を使用します。

固定資産税の計算式
固定資産税=課税標準額×税率

固定資産税の計算では、まずは固定資産の課税標準額を求めます。課税標準額とは、固定資産評価基準に基づいて算出される固定資産税評価額のことです。土地・家屋の場合は、3年ごとに適正価格への評価替えが定められています。

次に、求めた課税標準額に税率を乗じて、固定資産税を算出します。一般的に用いられる税率は1.4%の標準税率です。ただし、自治体によっては1.5%や1.6%の税率を課すケースもあります。マンションの固定資産税は土地・家屋のそれぞれで固定資産税を計算し、合計することで算出します。

出典:総務省「固定資産税」

 

2-1.土地:軽減措置を適用した固定資産税の計算式

土地の固定資産税評価額は、宅地・農地といった地目別での売買実例価額などをもとに算定します。宅地の場合は「地価公示価格の70%」が目安です。また、マンションの場合は土地部分を他の区分所有者と共有しているため、土地の固定資産税評価額は他の区分所有者との持分割合で按分する必要があります。

さらに、土地の固定資産税評価額に対しては住宅用地の特例が適用されます。住宅用地の特例とは、住宅用地のうち1戸あたり200平方メートル以下の部分は固定資産税評価額が6分の1に、200平方メートルを超えた部分は3分の1に減額される制度です。マンションは戸数が多いため特例を受けられる面積も広くなり、基本的に6分の1の減額措置を受けられます。

土地について、軽減措置を適用した固定資産税の計算式は下記の通りです。

新築マンションの土地における固定資産税の計算式
土地の固定資産税=持分割合で按分した土地の固定資産税評価額×税率×1/6

出典:総務省「固定資産税」

 

2-2.家屋:軽減措置を適用した固定資産税の計算式

新築マンションにおける家屋の固定資産税評価額は、一般的に建築費用の5~7割になることが多い傾向です。また、新築マンションでは新築住宅にかかる固定資産税の軽減措置を利用できます。通常の新築マンションは5年間、長期優良住宅のマンションは7年間の期間において、固定資産税が2分の1になります。

家屋については、軽減措置を適用した固定資産税の計算式は下記の通りです。

新築マンションの家屋における固定資産税の計算式
家屋の固定資産税=家屋の固定資産税評価額×税率×1/2

なお、軽減措置適用期間が終了した後は2分の1の軽減措置がなくなります。

出典:総務省「固定資産税」

 

3.3000万の新築マンションの固定資産税シミュレーション

3,000万円の新築マンションを購入した場合について、条件を下記の通りに想定して、固定資産税の計算シミュレーションを紹介します。

<新築マンションの条件>

購入価格 3,000万円
専有面積 100平方メートル
土地の固定資産税評価額 750万円
家屋の固定資産税評価額 1,600万円
固定資産税の税率 1.4%

まず土地・家屋の固定資産税は下記のように計算します。

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×1.4%×1/2=11万2,000円

最後に、土地と家屋の固定資産税を合計して、固定資産税の総額を算出します。

固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+11万2,000円=12万9,500円

紹介した条件の場合、軽減措置の適用期間中は1年あたり12万9,500円の固定資産税がかかります。

 

4.【中古マンション】固定資産税の計算方法

中古マンションの固定資産税を計算する際、土地の固定資産税の計算方法は、中古マンションであっても新築マンションの場合と変わりません。土地は経年劣化がなく、経年による土地評価の影響はないと見なされるためです。また、土地の持分が200平方メートル以下であれば、軽減措置を受けられます。

中古マンションの土地における固定資産税の計算式
土地の固定資産税=持分割合で按分した土地の固定資産税評価額×税率×1/6

一方で、家屋の固定資産税では新築マンションの場合とは異なる下記の計算式を使用します。

中古マンションの家屋における固定資産税の計算式
家屋の固定資産税=再建築価格評点×経年減点補正率×床面積×評点1点当たりの価額

再建築価格とは、対象家屋と同じ建物を新築した場合に要する建築費のことです。経年減点補正率は、家屋新築後の経過年数に応じた損耗を減価で表しています。再建築価格に経年減点補正率を乗じた金額を家屋の固定資産税評価額として、さらに税率を乗じることで家屋の固定資産税を算出する仕組みです。

ただし、再建築価格は物価変動などによって変わり、経年減点補正率の数値も年数によって変動するため、中古マンションの固定資産税の計算は簡単ではありません。

出典:総務省「固定資産評価のしくみについて(家屋評価)」

 

5.3000万の中古マンションの固定資産税シミュレーション

3,000万円の中古マンションを買った場合の固定資産税を、下記の条件において築10年・築20年・築30年に分けてシミュレーションします。経年減点補正率は法務省のホームページで発表されている数字を使用します。また、100円未満は切り捨てです。

<中古マンションの条件>

購入価格 3,000万円
建物構造 RC造
専有面積 100平方メートル
土地の固定資産税評価額 750万円
新築時の家屋の固定資産税評価額 1,600万円
固定資産税の税率 1.4%

<築10年の場合>

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×0.7397×1.4%=16万5,692円
固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+16万5,692円=18万3,100円

マンションは築5年(長期優良住宅の場合は築7年)を超えると、家屋の固定資産税の計算で軽減措置を利用できなくなります。

<築20年の場合>

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×0.5054×1.4%=11万3,209円
固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+11万3,209円=13万700円

<築30年の場合>

土地の固定資産税の計算
土地の固定資産税=750万円×1.4%×1/6=1万7,500円
家屋の固定資産税の計算
家屋の固定資産税=1,600万円×0.3059×1.4%=6万8,521円
固定資産税の総額の計算
固定資産税の総額=1万7,500円+6万8,521円=8万6,000円

家屋の固定資産税評価額に関する経年減点補正率は、一定の年数までは築年数が経過するほど小さくなります。そのため、固定資産税の総額も築年数を重ねたマンションのほうが安くなるでしょう。

 

6.マンションにかかる固定資産税の負担を軽減する方法

新築・中古を問わず、マンションの固定資産税は数万~数十万の税負担がかかることにより、負担軽減のための対策が講じられています。ここからは、マンションにかかる固定資産税の負担を軽減する、3つの方法を紹介します。

 

6-1.手間や手数料のかからない納税方法がある

固定資産税の負担を少しでも軽減するためには、下記のような納税方法を選択するとよいでしょう。

・自動で引き落としがされる口座振替

口座振替は、一度手続きをすれば以降は自動で引き落としが行われます。固定資産税の納税にかかる手間が少なくなり、納税忘れも防げる方法です。

・固定資産税の納付でポイントが貯まるクレジットカード

クレジットカード納付は窓口などに出向く手間がかからず、カードによってはポイントも貯まる方法です。ただし、手数料として地方税お支払サイトのシステム利用料がかかる点には注意してください。

・ポイントが貯まり手数料もかからないアプリ決済

アプリ決済はスマートフォンから納税ができて、使用するスマートフォン決済アプリに応じたポイントが貯まる方法です。バーコード読み取り方式の場合は決済手数料もかかりません。

納税方法を工夫することで、納税のために窓口に出向いたり、手数料がかかったりするなどの負担を軽減できます。

 

6-2.リフォーム工事を行った場合に軽減措置がある

下記に挙げるリフォーム工事を行った場合、固定資産税の3分の1が減額される可能性があります。

<バリアフリー改修工事>

個人が築10年以上を経過した住宅で一定のバリアフリー改修工事を行った場合に、固定資産税の軽減措置を受けられます。

固定資産税の減額率 翌年度分の固定資産税から3分の1が減額
対象の工事
  • 通路や出入口の幅の拡張
  • 階段の勾配の緩和
  • 浴室の改良
  • トイレの改良
  • 部屋や廊下などへの手すり設置
  • 床の段差解消
  • 出入口の戸の改良
  • 滑りにくい素材の床への取り替え

出典:国土交通省「バリアフリー改修に係る固定資産税の減額措置」

なお、適用を受けるためにはバリアフリーを必要とする人の居住など、さまざまな要件を満たす必要があります。

<省エネ改修工事>

2014年4月1日以前に建築された住宅で一定の省エネ改修工事を行った場合に、固定資産税の軽減措置を受けられます。

固定資産税の減額率 翌年度分の固定資産税から3分の1が減額(120平方メートルの床面積相当分まで)
対象の工事
  • 窓、床、壁、天井などの断熱改修
  • 高効率空調機の設備設置
  • 高効率給湯機の設備設置
  • 太陽熱利用システムの設備設置
  • 太陽光発電システムの設置

出典:国土交通省「省エネ改修に係る固定資産税の減額措置」

省エネ改修工事の適用を受ける場合も、さまざまな要件を満たさなければならない点に注意しましょう。

 

6-3.大規模修繕工事を行った場合に軽減措置がある

マンションの大規模改修工事を行った場合は、6分の1から2分の1の固定資産税の軽減措置を受けられます。

固定資産税の減額率 翌年度分における家屋の固定資産税が6分の1から2分の1の範囲内で減額
対象となるマンションの要件
  • 築20年以上である
  • 総戸数が10戸以上である
  • 過去に長寿命化工事を行っている
  • 長寿命化工事に必要となる積立金を確保している
  • など

工事の要件
  • 外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事などの長寿命化工事を実施している
  • 2023年4月1日~2025年3月31日の間に工事が完了する

出典:国土交通省「管理計画認定マンションの場合」

なお、実際の減額率は該当住宅の所在する市町村が6分の1から2分の1の範囲内で決定します。

 

7.【新築・中古】3000万のマンションの固定資産税を知るには?

3,000万円のマンションでかかる固定資産税は、下記の方法で確認できます。

・新築マンションの場合

新築マンションは建物完成前に購入申し込みを行うことがほとんどであり、マンション購入前に明確な固定資産税評価額を算出できません。購入予定のマンションにモデルルームがある場合は訪問して、担当者に固定資産税がいくらかかるかを尋ねるとよいでしょう。類似する条件のマンションなどから、固定資産税の目安を教えてもらえます。

・中古マンションの場合

中古マンションでは固定資産税評価額がすでに算出されています。不動産会社の担当者に尋ねれば、明確な固定資産税を教えてもらうことが可能です。

新築と中古のどちらにしても、不動産会社の担当者に確認すれば、固定資産税の目安が知れるでしょう。

 

8.マンションの固定資産税に関する注意点

固定資産税は計算式に当てはめて算出することはできるものの、実際の支払い時にはシミュレーション通りにはいかないことがあります。最後に、マンションの固定資産税に関する3つの注意点を解説します。

 

8-1.軽減措置の終了後は固定資産税が上がる可能性がある

新築マンションでは家屋の固定資産額を2分の1にする軽減措置が適用されるため、購入当初は固定資産税の総額を安く抑えられます。しかし、軽減措置の終了後は2分の1の減額がなくなり、固定資産税が上がる可能性があります。軽減措置が適用される期間は通常のマンションは5年間、長期優良住宅のマンションでは7年間です。

そのため、新築マンション購入の際は、軽減措置が適用されている期間中の固定資産税納税額だけでなく、適用終了後の納税額についてもシミュレーションすることをおすすめします。もともとの納税額を理解していれば軽減措置終了を見据えた資金計画ができ、固定資産税が上がったときにも滞りなく支払いを行えるでしょう。

 

8-2.年度途中で中古を買う場合は日割り計算になることがある

固定資産税は、1月1日時点で固定資産の所有権がある方に課税されます。新築マンションを年度途中に購入する場合であれば、基本的に固定資産税は翌年から支払うことになるでしょう。しかし、中古マンションの場合は固定資産税の支払いが翌年からになるとは限りません。中古マンションを年度途中で買うと、今年分の固定資産税が日割り計算になる場合があるためです。

たとえば、中古マンション購入の時期が4月末の場合、固定資産税12か月分のうち4か月分を売主が負担し、残りの8か月分は買主が負担することになります。実際には売主・買主が別々に納税するわけではなく、買主が負担する分の固定資産税額を売主に渡して、売主が納税者として固定資産税を納付します。

固定資産税の日割り計算は不動産取引上の慣例となっており、発生するケースは多いと言えます。また、固定資産税として売主に渡すお金は、中古マンションの価格の一部という扱いになり、売主が不動産会社の場合は課税対象になる点にも注意が必要です。

 

8-3.固定資産税を滞納すると最悪の場合は競売にかけられる

固定資産税を滞納すると延滞税などが発生し、最悪の場合は物件が競売にかけられるケースもある点に注意してください。固定資産税を滞納したときは、納付期限から20日以内に自治体の督促状が届きます。督促状は未納を確認し、附属の納付書による納付を促す書類です。督促状が届いた後も滞納している方には、催告書を送付するケースもあります。固定資産税の滞納をしていると延滞税が発生するため、本来の納付額よりも高額な納付が必要です。

また、督促状が届いてから10日以内に固定資産税の納付をしない場合、自治体は未納付者の財産を差し押さえることが可能です。差し押さえられる財産は預貯金と給与であり、差し押さえた財産をもって固定資産税の納付額に充当します。差し押さえた預貯金と給与だけでは固定資産税の支払いができない場合には、土地・建物といった不動産も差し押さえて競売にかけます。

そのため、固定資産税の支払いが難しい場合は、自治体の納税窓口に相談しましょう。納税期限の猶予や納税額の分割・減免などの措置が受けられる可能性があります。

 

まとめ

3,000万円のマンションを買ったときには、固定資産税が発生します。固定資産税は「課税標準額×税率」という計算式で算出できます。新築・中古を問わず、ある程度の金額はシミュレーションできますが、正確な納税額を知りたいときは不動産会社の担当者などに確認するとよいでしょう。

また、一戸建てに限らずマンションでも固定資産税の軽減措置を受けることが可能です。固定資産税は毎年払い続けるものなので、軽減措置も利用しながら、できるだけ負担のない方法で着実に納税しましょう。


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